第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『えっと……ウソと言っても色々あると思うんだ。た、たとえば……大切な(ひと)を傷付けたくなくてつくウソとか、本当はウソをつくつもりはなかったのに、話の流れが早すぎて、言い出せなくなっちゃって、それで……結果的にウソになっちゃったとかさ、』 1コ目の例えはいわばダミー、本命は2コ目の方だ。 最初からウソをつくつもりはなかった……という昨日のバラカスの状況を話す為の前準備なのだ。 例え話はいくつかあった方が自然っぽいと思うんだけど……ん……なんか緊張するよ。 だって白雪ちゃんは真面目な子だもの。 ウソや不正が大嫌いで、好きなコトバのひとつには【ルール遵守】があったはず。 8年前、黄泉に来たジャッキーが、実は現世で蘇生をしてた……というのが分かった時も、『このまま黄泉に残してやれ』と言うバラカスvs『知ってしまった以上不正は出来ない』という白雪ちゃんでバチバチになったんだ。 『ん……そうね。確かに今マーちゃんが言った種類のウソなら、そこに悪意はないかもしれない』 よっしゃー! うん! うん! そうだよね! いくら真面目な白雪ちゃんでも、こういうウソならついてしまった事があるんじゃないかな……? ウチとバラカスで考えた作戦だ、そういうのを思い出してもらって、悪意のないウソに対するハードルを下げるの。 よ、よし、聞く、ウチは聞く。 『白雪ちゃんもこういうウソならついた事ない? ウチはあるよ』 ウチの理想としては、”そう言われると心当たりがあるわ……” から、本命の2コ目のウソ、”話の流れが早すぎて、言い出せなくなっちゃった” パターンへの共感を引き出し、それでその後、”ソレガシー” の正体はバラカスでした、バラカス、本当のコトを言おうとしたけど言い出せなくなってしまった……に持っていきたいんだけど、どうかな、うまくいくかな……? 『……ん……そうね、言われてみると心当たりがあるわ』 きゃー! あるってー! それは2コ目? 2コ目? 言い出せなくなっちゃった方?(だといいな) 『そか、白雪ちゃんにもあるんだね。それはどんなウソだったの?』 なるべく自然に聞いてみた。 白雪ちゃんは赤いワインを一口飲んで、それからちょっぴり困った顔で言ったんだ。
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