第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『もう300年以上も前の話よ。私がまだ生きていた頃、1度だけお母さんにウソをついた事があるの』 白雪ちゃんの困った顔のもっと奥、そこにはなんとも言えない複雑な表情が下地に視えた。 『白雪ママに? へぇ……意外だよ。2人はすっごく仲良しだから、ウソも隠し事もないかと思ってた』 『ふふふ、それがあるんだな。そうは言っても数日でバレたんだけどね』 『あはは、白雪ちゃんってウソが下手そうだもんねぇ。それでどんなウソなの? あ、わかった! あれでしょ、ママの大事な研究道具。ビーカーとかフラスコとか割っちゃったんじゃない? それを隠そうとしてウソをついたんだ! ……なぁんてね、割ったとしてもママってば怒らなそうだし、そんなコトでウソはつかないか』 『そうねぇ、それくらいでウソはつかないよ。でも、割ってしまったコトは何度かあるの。お城の研究室、モノがゴチャゴチャありすぎるからさ……ほら、私って身体が大きいでしょう? 気を付けていてもぶつかって落としちゃうの。そうなるとお母さんは大騒ぎよ。『白雪ーっ! 怪我はない!?』って、』 あはははは、やん、ゴメン、笑っちゃうよ。 だってさ、白雪ママの慌てっぷりが頭に浮かぶんだもの。 …… ………… 『お母さんにウソをついたのは……私が死ぬ少し前、29才の頃よ』 え……っと……死ぬ少し前にウソをついたの……? それってどういう事……? 『白雪ちゃんが亡くなったのは、たしか……戦でだよね?』 なにが原因で亡くなったのか、うんと前に話してくれた事がある。 だけど詳しくは聞いていない。 『そう、戦よ。私の国はね、気候がよくて国民も穏やかで、とても平和な国だったの。季節ごとに祭りがあって、どこに行っても笑い声が聞こえたわ。なのに……ある日突然、隣国が攻めてきたのよ。私は女王として、自国を守る為に応戦したのだけど、戦いは予想以上に長引いてしまった』 『………………』
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