第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『戦が長引くにつれ、互いの兵力も、資源も、食料も乏しくなって、両国共もう限界が近かった。早く決着をつける必要がある、かと言って、これ以上の戦はしたくないし……それならいっそ、隣国の王と女王である私の1対1で決着をつけようと、決闘を申し込んだの。その結果、私が王に勝ち、終戦を迎えるはずだった。でも……そう上手くはいかなかったのよ。王には息子がいて、父親を殺された悲しみが、終わるはずの戦を終わらせてくれなかったの。亡き王の代わり、王子自ら指揮を取り、自国(うち)に攻め込んできたの』 はぁ……と、白雪ちゃんは小さいけれど深いため息をついた。 思い出しているんだろうな、辛いよね。 『そんなの……約束を破ってるじゃない。それじゃあ、いつまで経っても戦が終わらないよ……ひどい……』 『本当、ひどいわよね。これ以上戦えば、どちらの国も亡びるしかないというのに、どうしても戦を終わらせてくれないの。隣国の王子はね、父親を失って復讐の鬼になっていたのよ。なんとか戦を終わらせたいと思っていた、そんなある日……隣国から使いの者が来たの。王子も戦は本意じゃないけど、このままでは気持ちがおさまらない。だから終戦と引き換えに、女王の首を寄越せと言ってきてね』 『首……!? 白雪ちゃんの!? そんな要求、許されるはずがないよ、ヤダ! ウチ、そんなの絶対にヤダ!』 『マーちゃん……ありがとう。あのね、その話をお母さんにした時、やっぱりマーちゃんみたいに取り乱したわ。でも仕方なかったの。だって要求を飲むしか終戦の道がなかったんだもの。このまま戦をすれば両国とも滅びてしまう。そんな事にはさせたくない……だったら、私の首一つで救えるのなら構わないと思ったわ。ただ____お母さんは大反対だった』 『それはそうだよ!』 『絶対にダメ、行かせないって、そう言ったお母さんは、見張りをつけて私を部屋に閉じ込めてしまったの。でも、私が行かなければ、いつまで経っても戦は終わらない。このままではどちらの国の民も、大好きなお母さんも死んでしまう。それだけはどうしても嫌で……それで、』 ____わかった、 ____私、遠くへ逃げる、 ____逃げて逃げて生き延びてやるわ、 『そうウソをついたの。それで大急ぎで支度をして夜中に城を出たのよ。お母さんは『生きてちょうだい』って泣きながら見送ってくれた。私は『もちろんよ』と笑って、手を振って、その足で隣国へ行って……そこで私の命は終わったの』 『白雪ちゃん……ウチ……ウチは……』 『ああもう、そんな顔しないで。隣国の王子はちゃんと約束を守ってくれた。私の首と引き換えに戦は終わり、平和が戻ったの。 これが……私のついたウソよ。すぐにバレてしまったけど、そのせいでお母さんを泣かせてしまったけど、ああするしかなかったの』 話し終えた白雪ちゃんは、困ったようにニコッと笑った。 これが……白雪ちゃんが唯一ついたウソなんだ……壮絶だな…… ん……どうしよ、バラカスのウソとレベルが違いすぎるんだけど……
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