第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ふとよぎったバラカスの残念会、ウチはそれを頭を振って追い出した。 ダメダメ、弱気になってどうするの。 ウチは2人を応援したい、だからココにいる、だから頑張る……でしょ? バラカスがついたウソは2つ。 禁止されてる自分自身の再構築と ”ソレガシー” の正体だ。 確かに、褒められたコトじゃないけれど、ウチから視れば呆れはするけど怒る程のウソじゃない。 みんなと少し毛色が違う、ワルイコトも多少だったら平気でしちゃうバラカスだもの。 再構築の一つや二つ、したとしても不思議じゃない(ルール的にはダメだけど)。 それにね、再構築に関しては言い訳の余地があるよ。 バラカスはバンブー星のパンダ族。 あのビジュアルは、長年視慣れたウチでさえ、カワイイ……! って思ちゃう。 バラカスが外を歩いて霊目(ひとめ)につけけば、アイドル並みに騒がれる、きゃーきゃー言われて囲まれる。 そういうのもたまにならいいけどさ、毎回じゃあ大変だ。 疲れちゃうし落ち着かない。 騒がれたくない日もあるだろう、その願いを叶える為に再構築が必要だった……うん、これを言えば、白雪ちゃんなら分かってくれるよ。 たぶんきっと、叱りはするけど許してくれる……はず。 そうなると問題は、再構築より ”ソレガシー” の方だろうなぁ。 好きの気持ちに気付いてくれない白雪ちゃん。 バラカス選手の片想いは100年という長い月日を記録した、……って、100年はいくらなんでも長いよ。 そんなバラカスに突然、気持ちを聞き出すチャンスが訪れたんだ。 そりゃあ、聞くよね。 ウチがもしバラカスの立場だったら。 ん……なんだかんだで同じ事をしちゃうかも。 …… ………… これ、白雪ちゃんならどうかな? 白雪ちゃんならどうするかな? それによって……バラカスのウソが許せるかどうかが決まる気がする。 『マーちゃん、難しい顔してどうしたの?』 飲みかけのワインを置いた白雪ちゃんは心配そうにウチを視た。 『あ、ごめん、ちょっと考え事してたの』 なんて言おう、なんて切り出そう。 白雪ちゃんの話を聞いた後じゃあ、どんな言葉も薄く感じる。 なんて言うのがベストかな。 『考え事? それは……なにか悩み事? 珍しいわ、マーちゃんの眉間にシワが寄るなんて』 『あ……うん、悩みではないんだけど、えっとね』 『なに? 気になる事があるなら聞くわ。なんでも話してちょうだい』 そう____力強く言う白雪ちゃんの目は澄みきっていた。 綺麗な目で真っすぐウチを視ているんだ。 ねぇ、バラカス。 バラカスは素敵な(ひと)に恋をしたんだね。 白雪ちゃんは真面目で、優しくて、いつだって全力だもの。 ねぇ、バラカス。 ウチやっとわかったよ、白雪ちゃんになんて切り出したらいいのかが。 せっかくバラカスと作戦を練ったけど、あれじゃあダメだ。 白雪ちゃんには真っすぐだもの。 だからウチも真っすぐ切り出した方が良いと思うんだ。 深呼吸を一つ……手に汗が滲んできた。 でも、ウチは言う。 『あのね、ウチ、話したい事があるの。とっても大事な事よ。昨日、白雪ちゃんは ”ソレガシー” という(ひと)に会ったでしょう? その(ひと)ね、…………バラカスなのよ』
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