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『……ねぇ、白雪ちゃん?』
声を、かけた。
白雪ちゃんは目を伏せたまま、視線の先はなんにもないテーブルだ。
ここの料理は手作りだから、出てくるまでに時間がかかる。
心躍るおししいゴハンはまだ来ない。
テーブルにはなにもない。
『白雪ちゃん……ごめん、急にこんな事言ったら驚くよね、あのね、違うの。バラカスね、本当に白雪ちゃんの事が好きで、それで、』
『マーちゃん』
あ……ウチ……まだ話してる途中なのに……白雪ちゃん、途中で割り込んできたよ……こんな事……長い付き合いだけど初めてだ。
『……うん、』
顔を上げた白雪ちゃんの表情は薄い。
喉が張り付く、短い返事が精一杯だ。
ウチ……間違えた?
どうしよう、どうしたらいい? なんて言ったらいい……?
飲みかけのワイングラス。
白雪ちゃんは指で押してテーブルの端に追いやった、そして。
『聞いてもいいかしら、』
『……あ、うん、もちろん』
『改めて確認したいわ。 ”ソレガシー” というヒト族はバラカスであるという事で間違いないのね?』
『……うん、間違いないよ』
『そう、わかった。それで、バラカスはいつの間に再構築が出来るようになったの? 彼とはほぼ毎日一緒にいるけど、そんな話は聞いた事がないの。再構築で容姿を変えるなら、しかるべき機関で入念なカウンセリングが必要よ。申し込みから施術まで、早くても1か月はかかるはずだけど、彼がカウンセリングに通っている気配は無かった……ねぇ、マーちゃん。バラカスは正規のルートを踏んでいるのかしら、』
う……言葉に詰まる。
バラカスは正規のルートを踏んでいない。
せっかちパンダが1か月も待てるはずがない。
本当の事を言ったら、白雪ちゃんは怒るだろうな。
いっそ内緒にしようかな、でも……
『……踏んでない』
あぁ……言っちゃった。
ウチ、また間違えたかな。
でも、嘘、つきたくなかったの。
白雪ちゃんは、ウチの答えに長いため息をついた。
それは本当に長くって、同時に顔も萎れるように下を向く。
『はぁ………………そう。それはルール違反よね』
あ……空気が変わった。
白雪ちゃんの綺麗な声が掠れてる。
まるで錆びた鈴の音みたいに。
ウチは手のひらに汗を掻いていた。
雲行きが怪しい。
ちょっと待って、変な事考えてないよね?
少しだけ言い訳させて、ウチの話を聞いて。
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