第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ウチばっかり、一方的にしゃべってる。 こんなのただの時間稼ぎだ。 ウチは何かを言いかけたバラカスを遮って、【フェリーチェ】に行ったコト、そこで初めて入った【スターレイク】の個室がすっごく綺麗だったコト、それからウエイターの菅野さんが面白かったコト、そういったのを一気にしゃべったの。 1人で言って1人で笑って『今度ウチと一緒に【フェリーチェ】に行こうよ!』と誘ってさ。 そのうち……話が尽きてしまった。 本当はヤマちゃんが可愛かったコトも話したいと思ったよ。 でも、それを話すと白雪ちゃんのコトも話すコトになる。 こういう気の遣い方は間違ってるんだろうな。 ただね、それだけじゃない。 白雪ちゃんの今の気持ちを伝えるのに、ウチが助走をつけてるだけ。 勢いをつけないと話せそうにないから。 『マジョリカ、』 突然、バラカスがウチの名前を呼んだ。 背中を丸めて下を向いて、ウチの近くに顔を寄せ、そして、 『悪かったな。大変だっただろう?』 目を合わせ優しい顔で笑ってくれた。 頭の良いバラカスの事だ、ウチを視て、もう分かってしまったのかもしれない。 『……大変なんて……そんな事ないよ。……あ、あのねバラカス、ウチ、白雪ちゃんと話してきたんだけど……』 『ああ、』 『ごめん……あのね、ウチ、うまく話せなかったんだ、本当はもっと上手に話せれば良かったんだけど、ウチ、白雪ちゃんと話てるうち、変に遠回しに言うより、本当の事を全部話した方が良いような気がして、』 『ああ、』 『……それでウチ、白雪ちゃんに……ソレガシーの正体はバラカスだって事と再構築の事を話しちゃったんだ。そしたら白雪ちゃん怒ってしまって……正規のルートを踏まない再構築はルール違反だって……』 『……そうか、』 『ウ、ウチ、白雪ちゃんが真面目なのは知ってるよ。もしかしたら怒るかもと思ったけど、でも、怒ったけど、ウチがルール違反にはルールに乗っ取ったペナルティをって言ったら、それで納得してくれて、でも……でもね、白雪ちゃん、それだけが気になったんじゃないみたいで……』 ____私、今聞いた事、 ____最初にバラカスの口から聞きたかったわ、 ____どうしてバラカスが来ないの? ____こんな事……マーちゃんに言わせて…… 『白雪ちゃん……ウチじゃなくて、バラカスから事情を聞きたかったみたいなんだ。ごめんね、ウチが悪いよ。ウチが白雪ちゃんの気持ちに早く気付いて、余計な事を言わないで帰ってこれたら良かったんだ、バラカス……バラカス、ごめんね……!』 駄目だ……堪えても涙が出ちゃうよ。 ウチが泣いたらバラカスは気を遣う、だから泣いちゃ駄目なのに、ウチはなんでこうなんだろう。 感情が昂ると勝手に涙が出ちゃうんだ。
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