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『ほら泣くな、大丈夫だと言っただろう? なに、フラれたって ”親友” だ。明日になったらいつもみたいにシレっと会うさ』
ウチをお腹に抱いたまま、バラカスは優しい口調でこう言った。
ああ……そういえば、白雪ちゃんからも聞いたな。
____もしも2人が付き合って……
____それがダメになったとしても、
____私が嫌だと言わない限り毎日でも会うって、
____会わないのは俺が耐えられないって……
話してくれた白雪ちゃんは頬を染めて、照れてはいたけど嬉しそうだった。
で、でも……
____あとでバラカスを叱りましょう、
____そしてペナルティを受けてもらいましょう、
____その事、マーちゃんから話してくれる?
とも言っていた。
という事は……白雪ちゃん、少なくともしばらくバラカスと会わないつもりなんじゃ……あぁ……言えない……こんなの今は言えないよ……これを言ったらきっとバラカスは立ち直れない。
そうだ……ウチ、今夜はココに泊っていこう。
それで、朝になって、気持ちが落ち着いたら話すんだ。
今度は間違えないようにしなくちゃ。
言葉を選んで、様子を視ながら、慎重に話すの。
よし、そうしよう……と、密かに決めて、今夜は泊るよって言おうとした時だった。
ガガガガ……ガガ……ガガガガガ……
頭の中にノイズが聞こえた。
あ……これって……どうしよ……こんな時にタイミングが悪いよ、
今はダメ、事情を話してまた明日にしてもらおう、
ガガ……ガガガ……ガガガガガガガガ……じょ……
ガガガガガ……まじょ……ガガ……りか……マジョ……ガガガ……
【……マ……マ……ジョ、マジョ、マジョリカ、聞こえる?】
聞き慣れた甘い声が頭に中に滑り込む。
ウチの名前を優しく呼んで、ウチが応えるのを待っている。
ほとんど毎晩こうやって、遠く離れた現世と黄泉は光の欠片で繋がれる。
『……ジャッキ、ん、聞こえるよ』
【良かった、今夜も通信良好だ。マジョ、今大丈夫? 話してて平気?】
うぅ……ジャッキからの通信、嬉しいけどゴメンね。
今はダメなの。
『あ……うん、ごめん。今夜はちょっと……』
バラカスがこんな状態なのに、ここでジャッキと話す訳にはいかないよ。
ウチの歯切れの悪さ、勘の良いジャッキは何かを察してくれたみたいで、それ以上は何も言わずにいてくれた。
そして、
【ごめん、忙しかったか。それなら切るよ、また明日にでも掛けなおすから】
こう言って通信を切ろうとしてくれたんだ、だけど。
【えぇー! なんで切っちゃうんだよー! マジョリカと話したいー! ジャッキーばっかりズルイよー!】
お、大倉の声だ……ジャッキの後ろで騒いでる、ウチと話たいって駄々こねてるよ……もう、なんでかなぁ、なんで察しが悪いかなぁ。
騒いできかない大倉に、早くもジャッキがキレた。
【弥生、いい加減にしろ。マジョは今、忙しいんだよ。まったく……おまえは子供か? 明日になったらまた繋げてやるから、それまでガマンしろ】
うわ……相変わらずジャッキは大倉に対してコトバがキツイ。
ウチには絶対こんな言い方はしないのに……最初に聞いた時は驚いたけど、今ならわかる。
だって大倉はこれくらいじゃあ挫けない。
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