第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『ほら泣くな、大丈夫だと言っただろう? なに、フラれたって ”親友” だ。明日になったらいつもみたいにシレっと会うさ』 ウチをお腹に抱いたまま、バラカスは優しい口調でこう言った。 ああ……そういえば、白雪ちゃんからも聞いたな。 ____もしも2人が付き合って…… ____それがダメになったとしても、 ____私が嫌だと言わない限り毎日でも会うって、 ____会わないのは俺が耐えられないって…… 話してくれた白雪ちゃんは頬を染めて、照れてはいたけど嬉しそうだった。 で、でも…… ____あとでバラカスを叱りましょう、 ____そしてペナルティを受けてもらいましょう、 ____その事、マーちゃんから話してくれる(・・・・・・・・・・・・・)? とも言っていた。 という事は……白雪ちゃん、少なくともしばらくバラカスと会わないつもりなんじゃ……あぁ……言えない……こんなの今は言えないよ……これを言ったらきっとバラカスは立ち直れない。 そうだ……ウチ、今夜はココに泊っていこう。 それで、朝になって、気持ちが落ち着いたら話すんだ。 今度は間違えないようにしなくちゃ。 言葉を選んで、様子を視ながら、慎重に話すの。 よし、そうしよう……と、密かに決めて、今夜は泊るよって言おうとした時だった。 ガガガガ……ガガ……ガガガガガ…… 頭の中にノイズが聞こえた。 あ……これって……どうしよ……こんな時にタイミングが悪いよ、 今はダメ、事情を話してまた明日にしてもらおう、 ガガ……ガガガ……ガガガガガガガガ……じょ…… ガガガガガ……まじょ……ガガ……りか……マジョ……ガガガ…… 【……マ……マ……ジョ、マジョ、マジョリカ、聞こえる?】 聞き慣れた甘い声が頭に中に滑り込む。 ウチの名前を優しく呼んで、ウチが応えるのを待っている。 ほとんど毎晩こうやって、遠く離れた現世と黄泉は光の欠片で繋がれる。 『……ジャッキ、ん、聞こえるよ』 【良かった、今夜も通信良好だ。マジョ、今大丈夫? 話してて平気?】 うぅ……ジャッキからの通信、嬉しいけどゴメンね。 今はダメなの。 『あ……うん、ごめん。今夜はちょっと……』 バラカスがこんな状態なのに、ここでジャッキと話す訳にはいかないよ。 ウチの歯切れの悪さ、勘の良いジャッキは何かを察してくれたみたいで、それ以上は何も言わずにいてくれた。 そして、 【ごめん、忙しかったか。それなら切るよ、また明日にでも掛けなおすから】 こう言って通信を切ろうとしてくれたんだ、だけど。 【えぇー! なんで切っちゃうんだよー! マジョリカと話したいー! ジャッキーばっかりズルイよー!】 お、大倉の声だ……ジャッキの後ろで騒いでる、ウチと話たいって駄々こねてるよ……もう、なんでかなぁ、なんで察しが悪いかなぁ。 騒いできかない大倉に、早くもジャッキがキレた。 【弥生、いい加減にしろ。マジョは今、忙しいんだよ。まったく……おまえは子供か? 明日になったらまた繋げてやるから、それまでガマンしろ】 うわ……相変わらずジャッキは大倉に対してコトバがキツイ。 ウチには絶対こんな言い方はしないのに……最初に聞いた時は驚いたけど、今ならわかる。 だって大倉はこれくらいじゃあ挫けない。
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