第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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【あー! その声はバラカスか? ひっさしぶりだなぁ!】 ウチの心配をヨソに、バラカスに気付いた大倉が元気に声をかけた。 聞いたバラカスもすぐに、 『おぅ、久しぶりだな。元気でやってたか?』 と応え、その声に暗さはない。 あ……バラカス、なんだか嬉しそうだ。 そっか、そういえばそうだったな。 この2人は直接会った事はないけど、波長が合うと言うか……そう、最初から気が合っていた。 大倉が家族になるって話した時も『そうなるんじゃねぇかと思ってた』って、すんなり受け入れてくれたんだ。 ん……、ウチ、心配しすぎだったかな。 かえって良いのかもしれない。 ウチだけじゃ、泣いてばかりでしんみりしちゃう。 大倉とバラカス、みんなでおしゃべりした方が、バラカスも気が紛れるかもしれないよ。 【アタシは元気だよ! でもさ、昨日までは仕事が忙しくて泊りがけの現場だったんだ。サイアクだったよ。滅しても滅しても悪霊共は減らないし、アタシ、途中で飽きちゃってさぁ。早く帰りたいなーとか、とっとと滅して家帰ってカラアゲ作って食べたいなーとか、そんな事ばっか考えてた。でもな、カラアゲ食べたいって思ったらスッゲー霊力(ちから)が湧いてきてさ、スパートかけて一気に滅したんだ! もちろん帰ってお腹いっぱいカラアゲ食べたよ! おいしかった!】 『おま……相変わらずだな。悪霊共に囲まれてんのに、考えるコトがカラアゲか? フツーそんなコト考えねぇだろ、つーか、考える余裕がねぇだろ。食い意地でスパートがかかるなんざ、弥生はやっぱりバカだな』 【なっ! ムキー! バラカスまでバカってゆーなっ!】 『ケケケ! いいじゃねぇか、そういう(バカな)ヤツは嫌いじゃねぇよ』 【なんだよバラカス……アタシのコトが好きなら素直にそう言えばいいじゃんか。アタシには旦那と(ジャッキー)嫁が(マジョリカ)いるけど、それでも良いか?】 『いや、お前ナニ言ってんだ? 旦那は分かるが嫁ってなんだ。マジョリカはお前の嫁なのか? そう思ってるのお前だけだろ』 【そんなコトないよ! マジョリカだってアタシのコト旦那だって思ってるって!】 『まぁ、黄泉じゃあそういうのも珍しくねぇけど、お前の場合一方的に思ってるだけなんじゃ……だからな、あのな、』 な、なんか、大倉がヘンなコト言い出してるけど、でも、バラカス楽しそうに笑ってる。 良かった……こうやって笑ってくれれば気持ちが晴れる。 いっぱい笑って、ゆっくり眠って、それで、明日になったら改めて話をしよう。 大倉に感謝しなくちゃ……うるさいけど、しつこいけど、たまに困るけど、だけど大倉のこういうトコ、ウチも見習いたいよ。 明るくて、楽しくて、一緒にいるとたくさん笑える。 ……と、安心してたのに。 このあと大倉は地雷を踏んだんだ、……それが、 【嫁と言えばさぁ、バラカスはどうなんだ? うひゃひゃ、こないだジャッキーから聞いたんだ。ずっと片想いしてんだろ? 告白とかしないのか? 男ならガツンと告れ! YOU、告っちゃいなYO!】 これっ! フラ……あ、どうしよ……ウチ、貧血起こしそ。 ★弥生、現場でカラアゲのコトで頭がいっぱい。 ↓985036ec-2639-4688-bb60-525634db3bd0 ※特典の『霊媒師らくがき』にも載せてます。
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