第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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…… ………… ……………… 【なるほどな。それで白雪ちゃんは怒っちゃったのか】 真面目な口調でこう言ったのはジャッキだ。 言われたバラカスは力なく項垂れて『そうだ……』とだけ答える。 落ち込んではいるけれど、さっきほどじゃあない。 バラカスは今、ジャッキと大倉に 、 “どうしてフラれたんだ? ぜーんぶ話せ!” という……デリカシーの欠片もない質問を根掘り葉掘りされてるの。 ウチは横で聞いててちょっぴりハラハラ。 それ聞いちゃう?  そこまで聞いちゃう?  ああ……ああ……もう許してあげてー!  な、質問責め。 でもバラカスは答えてる。 ため息をつきながら、たまにブーブー言いながら、息子と(ジャッキ)娘の(大倉)尋問に片っ端から答えてるんだ。 こうなったのは大倉がキッカケだ。 失恋したてのバラカスに、知らないとは言え "YOU、告っちゃいなYO!" なんて、スキップしながら地雷を踏んでバラカスをへこませた。 でも……事情を知った大倉は、 ”変な事聞いてごめん” でも、 ”大変だったね” でもなく、 ____フラれたって関係ない、 ____父ちゃん、胸張れよ、 ____アンタ最高にカッコ良いわ、 力強くこう言った。 その時のバラカスは、時が止まったみたいに石化して、そこに大倉はいないというのに、上を視て、しばらくそうして、それで、小さな声で『ありがとよ』って呟いたんだ。 【え? なに? 聞こえなかった】 聞き逃した大倉は、"もう一回言ってよ” って、しつこくしたけど、ニヤリと笑ったバラカスは ”もう言わねぇ” と煙に巻いていた。 そこからだ。 バラカスが少し元気になったのは。 大倉に言われたコトが嬉しかったんだと思う。 告白して、たった1日でフラれたけど、でも、そんなの関係ないって、口に出して言ってもらえたコトが、バラカスの心を楽にしたの。 スゴイな……大倉は。 うるさいけど、しつこいけど、たまに困るけど、だけど、あの子のコトバはヒトを救う。 …… ………… ……………… 【それでバラカス、白雪ちゃんはどのくらい怒ってるの? 謝っても許してもらえなそうなのかい?】 頭の中にジャッキの声が滑り込む。 どのくらい怒ってるって……ん……すごくだよ。 謝る前に、しばらく会ってもらえなそう。 ああ……それを考えると憂鬱だな。 なんて言ったら良いんだろ。 あ……そうだ……大倉……大倉なら、なんて言うかな……?
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