第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『バラカス、大丈夫!? しっかりしてぇっ!』 倒れたパンダは芝生の床にうつ伏せで伸びている。 霊体(からだ)のおっきなバラカスだから、抱き起してはあげられないけど、代わりにふかふかのお腹をさすってあげた。 心なしか、白黒毛皮の白のトコロが青くなってる。 これ……そうとう効いてるな。 でも、遅かれ早かれ言わなくちゃいけないコトだ。 視てて辛いけど……仕方がないの。 【あ……ちょっとハッキリ言いすぎたか? ご、ごめんよ、父ちゃん。でもさ、やっちまったモンは今更言ってもどうにもならないよ。ほら、元気出せっ! なっ!】 いや、無理でしょ……さすがに今回無理でしょ…… 大倉ならなんて言う? って思ったけど、予想をはるかに超えていた。 ここまでハッキリ言うとは……ん、ちょっとは思ったけどさ。 もう死んでるのに、死にそうなバラカスは、それでもなんとか霊体(からだ)を起こして胡坐をかいた。 そして掠れた声で呟くように言ったんだ。 『そうかぁ……そうだったのかぁ……もう、会えないのかぁ……あぁ……やっちまったなぁ……こんなショックは【闇の道】に捕まったあの瞬間以来だわ……いや、そっちの方がまだマシかもな……パ……パン……』 ああ……視てられない。 いつもは強気のバラカスなのに、まるで子パンダみたいに小さくなって(イメージです)、落ち込み方が尋常じゃあない。 視かねた(聞きかねた?)ジャッキが、静かに優しくバラカスを励ました。 【バラカス……だ、大丈夫か? すまない、弥生は思ったコトは何でも口にしてしまうんだ。悪気はないのは分かるだろうが……今のバラカスにはキツイよな。その……なんだ、自分からも言わせてもらう。元気だせ。白雪ちゃんの事は残念だったが、これからまた頑張ればいいさ。しばらく会ってもらえないなら、時間を置いてほとぼりを冷ましてだな……】 うん、そうだね。 黄泉の国は時間はあってないようなものだもの。 老いる事も寿命もないの、これからまた頑張ればいいよ……と、思っていたのに。 ここでまた大倉がとんでもないコトを言い出した。 【ちょっと待てよ、ナニ言ってんだ。こういう失敗は、とっとと動いた方が良い。ほとぼりが冷めるのを待ってたら、気持ちもすっかり冷めちまうよ】 『……なんだよ、弥生こそナニ言ってんだ。お前が言ったんだろ。白雪はもう俺と会う気はないって。相当怒ってるはずだって。……もう無理だ。諦めるしかねぇんだよ。かと言って、明日から嫌いになんてなれやしねぇ。このまま片想いを継続するさ』 【あーそれな、確かに言ったわ。でもアタシは、だからってアキラメロとは一言も言ってないだろ?】 『どういう意味だよ。言っちゃねぇが、言ってるのと同じだろ』 【同じに聞こえたか? そりゃ悪かった。違うよ、アタシはしつこい性格なんだ。それくらいでアキラメロなんて言わないさ。あのな、こういうのは早い方がいい。バラカス、今から白雪に逢いに行けよ】 『パ、パンーーっ! 弥生、言ってる事がぜんぜん違うじゃねぇかよ! 白雪はもう俺とは会わないだろうって言ったクセに、今から逢いに行けだ? 意味がわかんねぇよ!』
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