第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ガバッ! わわっ! なに!? 急にバラカスが立ったよ!(ドキドキドキドキ) 丸い手を握りしめて上を向き、そこに弥生はいないのに、いるかのように大声をあげた。 『弥生、お前は本当に遠慮がねぇなぁ! パパに向かって言いたい放題言いやがる! でもよ、……チッ! ありがとな! 弥生、ジャッキー、マジョリカ! 悪いがちょっと出かけてくる』 バラカス……! い、行くんだね、白雪ちゃんに会いに……! バラカスの宣言に大倉は弾んだ声でこう聞いた。 【へへっ! やっとその気になったか。でもさ、白雪が今どこにいるのか知ってんの? まずは家にでも行くのか?】 『いや、家には行かねぇ。行ってもいねぇだろうからよ。今日みてぇな夜はよ、大草原にいるはずだ。アイツは昔からそうだ。嫌な事、落ち込む事があった日は、草原でひたすら筋トレするんだよ。今夜は間違いなくいるはずだ。弥生、ジャッキー、ありがとな。マジョリカも泣かせちまって悪かった。行ってくるよ、ちゃんと顔視てあやまってくる。許してもらえなくても、怒鳴られても、飛び蹴りされても足掻いてくる、じゃあ、ちょっくら土下座してくるわ____大草原へ、』 ブンッ! 早口で話していたバラカスは、瞬間移動のための言霊を最後に姿を消した。 バラカス、頑張って。 白雪ちゃんにあやまって、それで、願わくば許してもらえますように。 それがどうしてもダメなら、せめて親友に戻れますように。 両手を絡めて、神様にお願いをする……と、その時、大倉の慌てた声がウチの頭に滑り込んできた。 【マジョリカ! なにやってんだ、すぐに追いかけろ!】 『追いかけろって誰を? ……まさかバラカス』 意味が分からない、ウチは半信半疑で大倉にそう聞くと…… 【そう、バラカス! 尾行して気付かれないように覗くんだよ! ほら早く!】 えぇ!? 冗談でしょ? 覗きに行くの? それって、それは、そればっかりは……! 『だ、だめだよっ! そんなコト……バラカスにも白雪ちゃんにも悪いもん! ヒトの恋を覗くなんて、し、しちゃイケナイ事でしょ?』 ウチがいくらそう言っても、大倉は聞かないの。 ダ、ダメ……そんなコトしちゃダメなの、ジャ、ジャッキ……!! 『ああもう、ジャッキからも言ってよ。バラカスと白雪ちゃんを覗くだなんてダメだよね?』 大倉は言い出したらきかないから、ウチは縋る思いでジャッキに助けを求めた……なのに、 【マジョ! 急いで行かないと、下手すりゃ瞬殺されて間に合わない! 早く行って! 追いかけて!】 えぇ……!? ジャッキまでそういうコト言っちゃうの? んんんんん……もうっ! 分かったよ、行くよ! 行きますよっ! ウチはバラカスの家を飛び出して、庭にある移動の陣へと駆け出しだのだ。
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