第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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◆ そろーり、そろーり……抜き足差し足。 大草原に着いたウチは、なるべく音を立てないように、ニンジャみたいに静かに歩く。 歩きながら空を視れば満天の星空が、大地を視れば紫色の夜光花が、どちらも果てなく広がって……はぁ……こんなキレイな草原で、ウチは一体なにしてるんだろ。 【マジョ、話す時は小声でね。バラカスと白雪ちゃんに聞こえちゃうから】 ↑ そういうジャッキも小さな声。 【いいか、マジョリカ。絶対に視つかるなよ。スネークだ、スネークになれ】 ↑ 大倉もジャッキくらいの小声だけど、ん? スネークって誰? とりあえず、バラカスと白雪ちゃんはどこにいるんだろ。 2人はもう会えたのかな? それともまだかな? バラカスが消えてすぐ、ウチは陣で移動した。 そんなに時間は開いてない。 パンダは霊体(からだ)が大きいし、すぐに視つけられると思うんだけど……あっ! いたっ! バラカス発見! 『ジャッキ、大倉、バラカス視つけたよ。ウチがいるトコからうんと離れてるけど、あれは間違いなくバラカスだ』 星の明かりに照らされて、ゆっくり歩く白黒パンダがココから視える。 出来る限りの小さな声でジャッキ達に伝えると、ウチはめちゃくちゃ褒められたんだ。 【よっしゃーっ! さすがはマジョリカ、視つけてエライぞ!】 【ああ最高だ。マジョの尾行にはセンスを感じるよ】 頭の中に聞こえてくるは2人の声。 すんごい小声で、まるで内緒の話みたい(ま、それに近いけど)。 『んも、”エライ” とか ”センス” とか何言ってるの。それより……やっぱり覗くのなんか良くないよぉ、ねぇ、やっぱりもう帰ろ? 3人でおしゃべりしながら、オウチでバラカス待っていようよ』 心臓に悪い(死んでるから関係ないけど)。 ウチ、生きてた頃も死んだ後も、ヒトの恋を覗くなんてした事ないもん。 だからドキドキしちゃうんだ(もちろんトキメク方のドキドキじゃない、ハラハラする方のドキドキ)。 覗きだなんて視つかったら怒られちゃう、そう思うと気が気じゃないよ。 オウチに帰ってパンケーキでも食べていたい。
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