第六章 霊媒師OJT-2

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「だから私、ママの事、アパートの事、事件の事……ネットで検索してみたの。そしたらいっぱい出てきた。オカルト板の殿堂入りもなってた。だけどそれのほとんどが無責任な嘘ばっかりなの! 私悔しい。ママは化け物なんかじゃない! すごくキレイで優しくて、私の自慢のママだった。いつだって父親から……アイツから私を守ってくれた。11年前のあの日だって、そう……」 いつの間にか、”母”ではなく”ママ”と呼んでいるユリちゃんは唇を震わせ耐えていた。 僕に当たっても仕方ないと思ったのだろうか、何度か深く息を吸い気持ちを落ち着かせているように見える。 当たってもいいのに。 それで少しでも心が軽くなるならいくらだって聞くし、僕に当り散らしてもかまわない。   「私ね、これから東京で一人暮らしをするの。昔住んでいたあのアパートの同じ部屋で。爺ちゃんの遺言なんだ。あの部屋に縛られているママに、私が大きくなった姿を見せてやってくれって。それでママを安心させたら、爺ちゃんが一緒に天国に連れていくからって。それで今日がその引っ越しの日で……」 「えっ! ユリちゃんだったの!? あの部屋の新しい入居者って!」 それまで黙って聞いていた僕だったが、思いがけない廻りあわせに、意図せず先に声が上がってしまった。
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