第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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白雪ちゃんの好きなモノといったらアレしかない。 そう、それは良質なたんぱく質! ____いい? マーちゃん覚えておいて、 ____良いタンパク質は良い筋肉を造るのよ、 と、白雪ちゃんはいつだって力説するもん。 となると……ゆで卵、大豆、牛乳、オトウフ、それから、それから……ん、ちょっと待って……心配になってきたよ。 いくら白雪ちゃんの好きなモノでも、今この空気の中で ”良質なたんぱく質” は……ど、どうだろう。 白雪ちゃん、泣きそうなのにゆで卵食べてくれるかな?  い、いや……食べないよね……さすがに今は…… や、やっぱりチガウのにしよう。 食べる物以外がいいな。 となると…………ダンベル、アームバー、腹筋ローラー、ベンチプレス……ん? ん、ん? んんんー、やっぱりコレもダメじゃない? 筋トレグッズも白雪ちゃんの好きなモノ。 それは間違いないけどさ、今するコトじゃないよねぇ。 うぅ……どうしよ、これしかない! って思ってたのに。 それにそもそも、白雪ちゃんの好きなモノを用意したとして、どうやって持って行くかだ。 ウチら ”視守り隊” が大草原(ココ)にいるのは内緒だもの。 もしいるのがバレてしまったら……きっと優しい2人の事だ。 怒ったりはしないだろうけど、気まずくなって、話の途中で ”もう帰る” となりかねない。 帰るだけならいいけれど、白雪ちゃんはそのまま会わなくなっちゃいそう。 ん……やっぱりダメ、絶対に視つかっちゃダメだ……! 【ねぇ、マジョ】 悩むウチをジャッキが呼んだ。 『ん? なに?』 【白雪ちゃんが和んでくれそうなモノは思いついた?】 『ん……まだ。ウチ、本当はいっぱい知ってるよ。その中でも筋トレ関係は絶対に喜んでくれると思うんだけど……今の状況には合わないなぁって、』 【そうか、悩むね。ん……それならさ、香りなんてどうかな? 白雪ちゃんが好きな香りを用意するんだ。それならマジョが直接持っていかなくていいし、リラックス効果もあると思うんだけど、どう?】 『香り……ジャッキ、それすごく良い考えだよ! ウチもね、仕事が終わって家に帰ったらアロマを焚いてるの。好きな香りは気持ちを癒してくれるよね、……うん、良いと思う! ウチ、さっそく用意するね!』  ”がんばって” 、ジャッキと大倉に応援されて、ウチは小さく指を鳴らした。 香りと聞いてすぐに頭に浮かんだモノがある。 構築するのは、今黄泉の国で女の子に大人気の香り付きのシャボン玉だ。 シャボン玉なら離れた場所から吹けばいい、たくさん良い吹いて良い香りでいっぱいにするんだから。 ぽわんっ! 指を鳴らして一瞬後。 ウチの手にシャボン玉セットが現れた。 シャボンを吹いたら良い香り、割れて消えたらもっともっと良い香り。 それでいて視た目もすごくキレイなの。 香りの種類はとにかくいっぱい。 その数は数百とも数千とも言われてて、どんな香りも揃ってる。
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