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『…………綺麗ね……』
白雪ちゃんの声がした。
ガラス細工の鈴の音みたい。
高めで、繊細で、美しくて、ウチの大好きな声だ。
さっきみまでの悲しげなトーンじゃない、今は薄っすらだけど弾んでる。
『なんだってこんなにシャボン玉が飛んでんだ?』
大きな霊体のバラカスは、辺りをキョロキョロ見渡している……んだけど……お願いだから振り向かないで、空とか、遠くとか……そうそう、白雪ちゃんを視てたら良いよ。
下は絶対視ないでね。
だってココには、いないはずのウチがいる。
視つかったら大変だ。
バラカスの頭を傾げた呟きに、
『どこかで誰かが吹いているのよ。こんなにたくさんのシャボン玉、きっと何人かいるんだわ』
白雪ちゃんが自然に答えた。
なんか……良い感じかも。
『パン? 夜にシャボン玉? ヘンなヤツもいるんだな』
『あら、ちっともヘンじゃないわ。このシャボン玉、今とっても人気があるの。綺麗で、良い香りがして、誰でも気軽に楽しめる。黄泉の女の子達はみんな夢中よ。バラカスは知らなかった?』
『あ、ああ、知らねぇ。最近はこういうモノが流行ってるのか』
『そうよ、……ふふ、おもしろいの。バラカスでも知らないコトがあるのね。 ”黄泉で一番の頭脳” と呼ばれてるのに』
あ……っ!
白雪ちゃんが笑った!
わ、どうしよ、すっごい嬉しい、
『ばっ、そんなんじゃねぇよ。俺だって知らねぇコトはたくさんあるさ。それよりよ、さっきから良い匂いがするな』
『ふふ……シャボン玉ってね、色んな香りが楽しめるの。この香りは柑橘ね。私の大好きな香りだわ』
『ああ、それはよく知ってる。お前、好きだよな。俺も柑橘は好きだ。だって、柑橘はお前の匂いだからよ、』
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