第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『…………綺麗ね……』 白雪ちゃんの声がした。 ガラス細工の鈴の音みたい。 高めで、繊細で、美しくて、ウチの大好きな声だ。 さっきみまでの悲しげなトーンじゃない、今は薄っすらだけど弾んでる。 『なんだってこんなにシャボン玉が飛んでんだ?』 大きな霊体(からだ)のバラカスは、辺りをキョロキョロ見渡している……んだけど……お願いだから振り向かないで、空とか、遠くとか……そうそう、白雪ちゃんを視てたら良いよ。 下は絶対視ないでね。 だってココには、いないはずのウチがいる。 視つかったら大変だ。 バラカスの頭を傾げた呟きに、 『どこかで誰かが吹いているのよ。こんなにたくさんのシャボン玉、きっと何人かいるんだわ』 白雪ちゃんが自然に答えた。 なんか……良い感じかも。 『パン? 夜にシャボン玉? ヘンなヤツもいるんだな』 『あら、ちっともヘンじゃないわ。このシャボン玉、今とっても人気があるの。綺麗で、良い香りがして、誰でも気軽に楽しめる。黄泉の女の子達はみんな夢中よ。バラカスは知らなかった?』 『あ、ああ、知らねぇ。最近はこういうモノが流行ってるのか』 『そうよ、……ふふ、おもしろいの。バラカスでも知らないコトがあるのね。 ”黄泉で一番の頭脳” と呼ばれてるのに』 あ……っ! 白雪ちゃんが笑った! わ、どうしよ、すっごい嬉しい、 『ばっ、そんなんじゃねぇよ。俺だって知らねぇコトはたくさんあるさ。それよりよ、さっきから良い匂いがするな』 『ふふ……シャボン玉ってね、色んな香りが楽しめるの。この香りは柑橘ね。私の大好きな香りだわ』 『ああ、それはよく知ってる。お前、好きだよな。俺も柑橘は好きだ。だって、柑橘はお前の匂いだからよ、』
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