第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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柑橘は白雪ちゃんの香り……たしかにそうだ。 ウチが死んだ時。 光る道を伸ばしてくれたのは白雪ちゃんで、その時……いろいろあって、ウチはすぐに黄泉の国に入らなかった。 道の途中で座り込んで、戻る事も進む事も出来なくて、誰もいない宇宙の中で一人ぽっちで泣いていた。 そんなウチを、道を走って迎えに来てくれたのは白雪ちゃんだった。 その時の事、今でもよく覚えてるよ。 白雪ちゃん、その頃から優しかったな。 ウチの話を聞いてくれて、気持ちを分かろうとしてくれて、それで、ウチが泣いてしまうと、そのたびに抱きしめてくれた。 懐かしいなぁ。 白雪ちゃんの腕の中は大きくて、温かくて、安心出来て、柑橘の良い香りがするんだ。 『私の香り……?』 白雪ちゃんが戸惑うようにこう聞くとバラカスは、 『ああ、白雪の匂いだ。甘すぎず爽やかで、この匂いを嗅ぐたびに、お前がいなくてもお前を思い出す』 静かな声でそう言った。 ああ……そう言えばそうだね。 普段のバラカスは笹ばっかり食べるのに、柑橘の果物だけは好んで食べるの。 食べながら ”良い匂いがする” って、よく言ってたよ。 そっか、バラカスは思い出してたんだね。 柑橘の香りは白雪ちゃんと結びついてるんだ。 『な、なに言ってるの、私がいなくても思い出すって……そんなのヘンよ。だ、だって私達は毎日会ってるじゃない。そういうのって、中々会えない時に思うんじゃないの?』 白雪ちゃん、動揺してる。 そうだよねぇ。 バラカスとは毎日会ってるのに、なのにこんなコト言われたらビックリしちゃうよねぇ、……ふふふ。 『毎日会ってたって思うモンは思うんだ。朝起きたらすぐにお前を思い出す、会いてぇなぁって思うんだ。で、昼だか夜だかお前に会って、時間が来たらそれぞれ帰るが、家に着いたらまた思うんだよ。白雪に会いてぇなぁって』 『…………! バ、バ、バラカス、あなたヘンよ、なに言ってるの、だって、』 『ヘンか? ま、仕方ねぇだろ、好きなんだから。で、白雪に会えない時間はイチパン淋しく柑橘を食べるんだ。そうすると鮮明に思い出す。まるでお前が傍にいるみてぇに感じるんだ』 『…………!! だ、だから、ちょっと待って、バラカスやっぱりヘンよ、いつもならそんなコト言わないじゃない、』 『パン? そうでもねぇぞ? 似たような事は昨日も言っただろ。それにこの100年、けっこう言ってきたつもりだがな。白雪が気付かなかっただけだ』 『…………!!! あ……も、……ちょっと待って、……え……あ……』
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