第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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現世との通信を一旦終えて、ウチは顔を前に向けた。 目に映るのはバラカスの大きな背中。 ハグをされてる白雪ちゃんは、パンダの霊体(からだ)にすっかり隠れて姿が視えない。 漂うシャボン玉は少し数が減ったものの、急いで補充する程ではなかった。 ストローの初期設定で、シャボンの硬度を ”中” にしておいて良かったよ。 長持ちだからいつまでも目に楽しいの。 『…………そうじゃないけど、』 あ……白雪ちゃんの声だ、なにか言おうとしてる。 バラカスは『ああ』と短く答え、話の続きを待ってるみたいだ。 そこから再び何秒かの沈黙があって……そしてその後、白雪ちゃんはポツポツと話を始めた。 『……そうじゃないけど、……もし、……私達が付き合う事にしたとして、この先うまくいくのかしらって心配になったの』 白雪ちゃんは途中で何度も言葉を詰まらせ、だけどハッキリ不安を口にした。 それを聞いたバラカスは、少なくとも表面上は慌てる事無く静かな声でこう言った。 『なんだよ、やっぱり信じられねぇのか。俺はもうバカなコトはしないぜ?』 『ううん、違うの、そうじゃないわ。……あのね、私、自分で言うのもなんだけど……真面目でしょう?』 おずおずと言う白雪ちゃん……なんだけど、真面目のどこがイケナイの? ウチは真面目な白雪ちゃんが大好きだけど。 そう思ったのはバラカスも同じみたいで…… 『真面目の何が悪い。俺は良いと思うがな。お前が真面目だからこそ、光道(こうどう)はデカイトラブルもなく回るんだ。……なんだ、もしかして誰かに何か言われたのか? 誰が言った、俺が行ってシメてきてやる』 『ま、待ってバラカス、誰にも何も言われてないわ。いたとしても ”シメる” だなんて言っちゃダメよ。……ほら、こういう所よ。バラカスと私の性格は正反対。親友ならそれでいいかもしれないけど……付き合うとなれば、それが壁になるかもしれないわ、』 『……なんだよ、真面目な白雪と不真面目な俺じゃあ、付き合ってもうまくいかねぇかもって、それが心配なのか』 『……うん。今回の事だってそうよ。もし……バラカスの恋の相手が私じゃなかったら、 ”直接言えないくらい臆病になっちゃったの?” ……なんて、笑い話で終わったかもしれない。私も……そう出来たら良かったのに、”悲しかった” だなんて子供みたいなコトを言ったわ』 『………………』 『これから、もし私達が付き合ったなら。たぶん同じような事がまたあるわ。他の(ひと)なら笑って終われるコトにこだわって、バラカスを困らせてしまう。私、バラカスを困らせたくないのよ』
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