第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『バラカス、わたし____』 聞こえた声はここまでだった。 視上げた先。 ふわふわの大きな背中に力が入って、きっと、……ううん、今バラカスは、白雪ちゃんを強く抱きしめている。 不安がる子をハグするそれとは違う。 想い続けた白雪ちゃんを、ありったけの愛情で包んでいるんだ。 しばらく2人はそのままで、ウチも一緒にそのままで、ホッとする柔らかな空気に浸っていた……んだけど、 『……ックシュン!』 あ、白雪ちゃんがくしゃみした。 『ど、どうした、寒いか?』 バラカスの声が焦ってる。 んも、落ち着いてよ。 ウチらはユーレーだもん、普段の生活で寒いだなんて思わないよ。 寒さとか熱さを楽しむなら、そういうアミューズメントに行かなくちゃ。 バラカスは黄泉に住んで100年だもん、知らないはずないのになぁ。 これは相当動揺してますね、幸せすぎてオカシナコトになってますよ、……ふふふ。 『ち、ちがうわ、寒くない。あのね、バラカスの毛皮が鼻にくすぐったかったの』 白雪ちゃんがいたって真面目に答えると、 『そっか、(わり)い。今降ろすからよ、』 明らかに残念そうな声なのに、バラカスは精一杯紳士ぶる。 だけどこのあと……自分の気持ちにやっと気付いた白雪ちゃんの、甘すぎる素直発言にパンダはひたすら攻撃されるのだ。 『あ……! いいの、このままでいて! ……私、今はあなたとくっついていたいわ』 『く、くっついていたい……!? お、おう、俺もだ』 きゃーーーー! 効いてる効いてる! 白雪ちゃん、今の攻撃、すんごい効いてるよ!(攻撃のつもりはないだろうけど) 『バラカスのお腹、とってもフワフワで安心する……あのね、バラカス。あの、私ね、……ありがとう。私を好きになってくれた事もだけど、……私ってやっぱり鈍感だわ。あなたを好きだという気持ちに気付いていなかったんだもの。それに気付かせてくれてありがとう、……あのね、わ、私ね、……気付いてなかった分、今、き、気持ちが、その……溢れてる。あなたが、…………す、好きよ、だいすk……』 最後の方は声が小さくすぼんでしまって、言い切きれてない。 だけどこれは白雪ちゃんの精一杯だ。 ウチは密かに、音も立てずにバタバタ萌えて、それで、バラカスはと言うと、嬉しすぎるのか『パ、パン……!』と呟き、ぎゅーっと白雪ちゃんを抱きしめた。 良かった……良かったね。 ウチ、すごく嬉しいよ。 100年の恋、想い続けたバラカスと想っていたけど気付けなかった白雪ちゃん。 2人の気持ちがやっと通じ合ったんだもの。 こんなに、こんなに嬉しいコトは、うぅ……だ、だめだぁ、涙が出ちゃうよ、ウチにとって大好きな2人だもの。 嬉しい気持ちが止まらない。 空を視れば綺麗な星空。 シャボン玉は……だいぶ減ってしまった。 よし、もう一回吹こう、いっぱい吹いて、またシャボン玉でいっぱいにしよう。 それと、この事をジャッキと大倉にも伝えたいな。 心配してる、だってウチらは家族だもん。 『ジャッキ……大倉……』 小さな声で呼びかけてみる、だけど返事がない。 というより、回線が繋がってないみたいだ。 長くなっちゃったからなぁ……一回、通信切ったのかな。 ウチからは呼び出せないし、待つしかないかな……と考えてた時だった。 遥か遠く、地平線に近い場所。 そこで小さく煌めく白い光を視付けたの。
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