第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ウチはただただ固まった。 だってバラカスが消えたんだ。 ウチを隠してくれていた大きな背中がなくなって、視えなかった向こう側が視えている。 いなくなったパンダの代わり。 今、白雪ちゃんを抱きしめてるのは背の高い男の(ひと)で、ガッシリとした筋肉体型、白いシャツに黒のパンツを履いている。 肩までの銀髪は真っすぐで、星の光が映り込んでいた。 だ、誰……? バラカスはドコに行ったの? 白雪ちゃんは小さな悲鳴を上げたけど、それでも腕に抱かれたままだ。 おかしいよ、白雪ちゃんなら簡単に逃げられるはずだ。 なんで黙ってるの?  その(ひと)はバラカスじゃな、………………ん……? あれ……?  なんか引っ掛かる、なんだろこの違和感は……んーんー…………あぁっ! も、もしかして、バラカスなの!? ウチは五度視した、何度も何度も視直した。 信じられない……何度視ても銀髪さんはヒト族で、パンダの面影は何一つ視あたらない。 でもそうだ、これ……バラカスが言ってた再構築だ。 自分の霊体(からだ)を組み替えたんだ! 話では聞いたけど、ここまで変わるだなんて……ウチ、ビックリだよ。 だって霊体(からだ)の大きさがぜんぜん違う、パンダの姿の半分以下になっちゃった。 半分以下……? うわぁ! このままじゃ視つかっちゃうよ! ウチは咄嗟に地面に伏せた。 うつ伏せに寝転がり、霊体(からだ)を低く、頭も低く、…………あっ! そうだ、髪! ウチの髪は宇宙色、夜は特に目立つんだ、隠さなくっちゃ! パチン! なるべく小さく指を鳴らして、膝掛けを構築し、ぼふんとそのまま頭にかけた。 …… …………ん、だ、ダイジョウブかな?(ドキドキドキドキ) ドキドキしながら指先で隙間を作る。 そっと前を視てみれば、ヒトになったバラカスがギューッと白雪ちゃんを抱きしめていて……ん、今のトコロ大丈夫っぽい。 んも……いきなりヒトになるなんて困るよぉ、ウチ、バラカスの背中に隠れてたのに、縮んじゃったら隠れるトコなくなっちゃうぅ。 と、とにかく落ち着こう。 大丈夫、膝掛け髪にかけてるし、まだ視つかってないし、しばらく大人しくしていよう、チャンスが来たら素早くぴゅーっと陣に行こう。
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