第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『こ、言葉に出さなかっただけって……わ、私をそんな目で視てたの……!?』 ん?  そうだと思うよ、ダメ? ウチはココロの中で岡村みたいに突っ込んだ。 だって ”綺麗なその目が好き” だなんて素敵じゃない? どこがダメなの? なんて思っていたらさすがは親子、バラカスパパもほぼほぼ同じコトを言った。 『ああそうだ、そんな目で視てたんだよ。(わり)ぃか? 別に悪かねぇだろ』 と冷静にやり返す。 やり返された白雪ちゃんは、自分でもチョットそう思ったのか、 『そ、そうね。確かに悪いコトではないわね、で、でもね、』 『でもなんだよ。言わねぇ方が良かったか? つーかよ、他にも言ってなくて思ってるコトいっぱいあるぜ? たとえば滑らかな琥珀の肌も綺麗だし、オニキスの短い髪も最高だ。ああでも、もう少し伸ばしてもいいかもな。きっと長い髪も似合うはずだ。ピジョンブラッドのルビーの唇は可愛らしいし、そして鍛え抜かれた霊体(からだ)は芸術家が手掛けた鎧のようで……』 『きゃーーー! いい、言わなくていい! お願いやめてー!』 し、白雪ちゃん、落ち着いて。 気持ちワカルけど、ファイト、深呼吸。 『”きゃー” ってオイ、悲鳴上げるコトじゃねぇだろうよ。お前、そんなに苦手か? 褒められるの』 『………………うん、』 『だがよ、ババァはこんなモンじゃねぇだろ。娘命すぎて毎日ベタ褒めじゃねぇか』 『お、お母さんのは慣れてるし、それに親だから大丈夫なの。で、でも、す、す、好きなパンダに言われるのは……まだ慣れてなくて、その、あの、ん、ごめんなさい』 『パン……手のかかる女だな。だがあやまるコトじゃねぇ。そういう所も可愛くて大好きだ』 あ、甘ーーーーーい!! 恋愛モードのパパ、すんごく甘いよーっ! どのくらい甘いかっていうと、そうだな……んー、ドロップくらい! 缶に入った宝石みたいな甘い飴。 いろんな味が楽しめて、どれをなめてもおいしいの。 甘々で優しくて、今のバラカスはドロップだ。 『も、もう……どうしよう、私、頭の中がグチャグチャよ……』 あ、パパすごくない? 白雪ちゃんの戦闘能力は黄泉で最強だよ? 特殊部隊のエースより強いんだよ? その白雪ちゃんが白旗をあげてるってコトは……今この瞬間、バラカスが黄泉の国で最強なのかも……ふふ、なんちゃって。 『まったくしょうがねぇなぁ。じゃあよ、どこなら褒めて良いんだ?』 『……褒めなくていいわよ』 『そういう訳にはいかねぇ。この100年、お前に会うたび綺麗だなと思っていたが腹ん中にしまっておいたんだ。けどもういいだろ、付き合う事になった訳だし好きなだけ言わせろ』 『…………ん……困ったわね、ん…………あっ! それなら筋肉を褒めてちょうだい! 私、筋肉なら誰にどれだけ褒められても大丈夫、嬉しいわ!』 『おっ、そうか、そうだよな。白雪と言えば鍛え抜かれた筋肉だ。よし、お前が慣れるまで、筋肉を褒めるか!』
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