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えっと……筋肉を褒めるの?
良いけど、良いけどさ、でもでも、ロマンチックとはちょっとチガウような。
バラカスは白雪ちゃんの両腕に手を添えて、黒い瞳をジッと視る。
そして、姿はヒトに変わっても、変わらないいつもの声がこう言った。
『……まるで夜空をそのまま閉じ込めたみてぇだな。お前の目は真っすぐで澄んでいる。最初に会った時から思ってたよ。【闇の道】に足を焼かれて、霊体は苦しいはずなのに、お前のその目に視つめられたら痛みも苦しみも吹き飛んじまった、』
『……バ、バラカス、……それじゃダメよ……』
『大丈夫、心配するな。泣きそうな顔するんじゃねぇよ。でも良い、そんなお前も大好きだ。泣きそうなその目……まるで天使だ。愛しくて尊い。その目を内側から支えている……上斜筋、上直筋、内直筋、下直筋、外直筋、下斜筋、きっとしなやかなんだろうな。強くて柔軟性があって、だから綺麗な目なんだろう』
『………………バラカス……私……私……』
『それだけじゃねぇ。水晶みてぇな眼球を、しっかり支える眼輪筋も仕上がってる。眼輪筋が衰えるとむくみやすくなるからな。そうなると腫れぼったくなっちまう。だがお前の眼輪筋はバリバリだ。だからだろうな……白雪の目は二重が深くてパッチリだ』
眼輪筋って……目の周りの筋肉のコトだよね。
そか……ここが衰えるとむくみやすくなるのか……でも、ウチらは死者だから衰えないけど……今度大倉に教えてあげよう(生者だからね)。
ウチは眼輪筋以外分からなかったけど、白雪ちゃんは分かるみたいで真面目な顔で聞いていた。
さっきみたいに恥ずかしがったりしていない。
『どうだ? これなら恥ずかしくねぇか?』
コツンとおでこにおでこをぶつけ、バラカスが優しく聞いた。
白雪ちゃんはニコニコ笑ってうんと頷く。
あ……すごく良い雰囲気。
ドロップが、降ってくる。
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