第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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えっと……筋肉を褒めるの? 良いけど、良いけどさ、でもでも、ロマンチックとはちょっとチガウような。 バラカスは白雪ちゃんの両腕に手を添えて、黒い瞳をジッと視る。 そして、姿はヒトに変わっても、変わらないいつもの声がこう言った。 『……まるで夜空をそのまま閉じ込めたみてぇだな。お前の目は真っすぐで澄んでいる。最初に会った時から思ってたよ。【闇の道】に足を焼かれて、霊体(からだ)は苦しいはずなのに、お前のその目に視つめられたら痛みも苦しみも吹き飛んじまった、』 『……バ、バラカス、……それじゃダメよ……』 『大丈夫、心配するな。泣きそうな顔するんじゃねぇよ。でも良い、そんなお前も大好きだ。泣きそうなその目……まるで天使だ。愛しくて尊い。その目を内側から支えている……上斜筋、上直筋、内直筋、下直筋、外直筋、下斜筋、きっとしなやかなんだろうな。強くて柔軟性があって、だから綺麗な目なんだろう』 『………………バラカス……私……私……』 『それだけじゃねぇ。水晶みてぇな眼球を、しっかり支える眼輪筋も仕上がってる。眼輪筋が衰えるとむくみやすくなるからな。そうなると腫れぼったくなっちまう。だがお前の眼輪筋はバリバリだ。だからだろうな……白雪の目は二重が深くてパッチリだ』 眼輪筋って……目の周りの筋肉のコトだよね。 そか……ここが衰えるとむくみやすくなるのか……でも、ウチらは死者だから衰えないけど……今度大倉に教えてあげよう(生者だからね)。 ウチは眼輪筋以外分からなかったけど、白雪ちゃんは分かるみたいで真面目な顔で聞いていた。 さっきみたいに恥ずかしがったりしていない。 『どうだ? これなら恥ずかしくねぇか?』 コツンとおでこにおでこをぶつけ、バラカスが優しく聞いた。 白雪ちゃんはニコニコ笑ってうんと頷く。 あ……すごく良い雰囲気。 ドロップが、降ってくる。
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