第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

136/285
前へ
/2550ページ
次へ
ニコニコ笑う白雪ちゃんと優しい声のバラカスは、おでこを小さくぶつけ合っていた。 コツンコツンとするたんび、2人の距離は縮まって幸せそうにコトバを交わす。 ウチはそれが嬉しくて、ウチもすごく幸せで、なんでか今すぐ、現世に行きたいなぁなんて思ったんだ。 『……楽しいね、』 コツン、 白雪ちゃんからおでこをぶつけ、小さな声でつぶやいた。 『ああ、楽しいな』 コツン、 バラカスもおでこをぶつける、そして、白雪ちゃんの短い髪に指を絡ませ、 『……すげぇ幸せ、』 そう言ってまたコツン。 白雪ちゃんは『私もよ、』と言いかけたのに、途中で言葉を止めてしまった。 ニコニコと笑っていたのに戸惑う色がほんのり浮かぶ、その顔は赤く染まって……ああ、これは無理もないよ、だって…… バラカスはつけたおでこを今度は離さずそのままに、白雪ちゃんの頬を両手で包み込んでいた。 それはとっても近い距離。 バラカスか白雪ちゃんか、どちらかがほんの少し動いただけで…………そう、 ちゅーってなっちゃう! きゃーーーーーー! ど、ど、ど、どうしよーーーーー! ウチ、ウチ、えっと、えっと、とにかくジャマしないようにしなくっちゃ! それと、それと、そうだ! 目をつむるの! 視ちゃダメ、絶対ダメ、目をつむって、膝掛けぜんぶ頭にかぶって、ココロの中で数を数えて、それで、それで、あぁでもどうしよ、プレッシャーだよ、絶対に視つからないようになくちゃ、だいじょぶかな、これでウチがジャマしちゃったら、しばらくバラカスに言われるよ、ブーブー言うに決まってる、ウチ、ジャマしないようにがんばるからね、きゃーーーーー! ウチはこの時、目をつむって、口もぎゅっと結んで、忍者のように隠れたつもりでいたんだ。 これ以上ないくらい完璧な忍びになったって、そう思っていたのに…… 『…………きゃっ! え……? そこにいるのはマーちゃん!?』 頭の上から白雪ちゃんの声が降ってきたんだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加