第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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え……!? み、視つかった……!? ど、ど、どうしよ……!(ドキドキドキドキドキ) 心臓がうるさいくらいドキドキいってる。 地面に霊体(からだ)を伏せたまま、ウチは固まり動けないでいた。 な、なんで視つかっちゃったんだろ? 膝掛けかぶって髪を隠したのに、声だって出さなかったのに、忍者になって気配も消したつもりだったのに……! 動揺しちゃって起きるに起きれず。 膝掛けかぶって隠れたまんま、ウチがグズグズしていると…… 『ね、ねぇ、やっぱりマーちゃんでしょ……? マーちゃんよね?』 またまた白雪ちゃんの声がしたの。 怒ってる感じじゃない、戸惑ってるけど優しい声だ。 けど出にくい、なのでダメ元で言ってみる。 『………………チ、チガウヨ、』(声色変えてみた) どうかな、うまくすれば『やだ! 霊違(ひとちが)いでしたか、ゴメンナサイ!』なんて言ってくれるかもって……淡い期待をしてたのに、 『ナニ言ってんだ。どこどう視たってマジョリカだろが』 呆れた声のバラカスが、あろうことかウチの膝掛けをめくったの! 『ひゃあ!』 ビックリしちゃってヘンな声が喉から飛び出て、ウチは慌てて起きて正座した。 と同時、ウチはカチンコチンと石化する。 だって……だってさ、目の前にはしゃがみこんだ白雪ちゃんとバラカスがいて、2人とも口を開けてウチを視てるんだもの。 『………………』←ウチ 『………………』←白雪ちゃん 『………………』←バラカス しばし3人、交互に顔を視合わせる。 な、なにか言わなくちゃ。 出来れば、本当のコトは明日言いたい。 今夜はうまくごまかして、ウチだけオウチに帰りたい。 願わくば、ちゅーの続きをしてほしい。 『えっと……偶然だねぇ。あは、あははは』 我ながらワザとらしいとは思うけど、ん、言ってみた。 銀髪碧眼ヒト型、やたらとイケメンなバラカスは『はぁぁぁぁ』と呆れ、深いため息をつく。 パパ、ダメ。 ため息つくと幸せが逃げちゃうよ? 白雪ちゃんはそんなバラカスを視て、なにか少し考えて、それで、ウチにこう聞いてきたの。 『マーちゃんはどうして大草原(ここ)に? なにか用事があって来たんでしょう?』 ドキ……! よ、用事ね、うん、あったあった。 実はウチ、こっそり2人を視守りに来たんだよ、……とは言えない。 今夜はまだ内緒だもん。 どうしよ、なんて言ってごまかそう、んー、んー…………あっ! 『ウ、ウチ、 ”カタナの稽古” に来たの!』 パチン! 答えながら指を鳴らして練習用のカタナを出現させた。 それを手に持ち、もっともらしくポーズを取る。 『刀の稽古? マーちゃんが?』 『そうだよ。ウチ、大倉からカタナの使い方を習ってるんだ。現世に行って覚えたコト、たまに1人で復習してるの』 これはウソじゃない。 ウチ、本当にカタナを習ってるし、現世から帰ってきたら大草原(ここ)とかオウチで復習してる(今夜は本当はチガウけど)。 『そう……知らなかったわ。教えてくれたら私も視てあげたのに』 白雪ちゃんは目を丸くしてウチを視る。 そう、ウチ、上手になるまで内緒にしようと思ってたんだ。 このコトはバラカスしか知らない。 『ごめんね、恥ずかしくて言えなかったんだ。でも視て! 最近少し上達したんだから。てやー!』 大倉から習った通り、ウチは練習用のカタナを振り上げた。 ダイジョウブ、危なくないよ。 だってコレ、新聞紙を丸めて造ったカタナだもん。 大倉との約束なんだ。 上手くなるまで本物は持たないって。
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