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「爺ちゃん、ちゃんと謝って!」
『ユ、ユリ、落ち着け、わかった、わかったから、な、』
そう、いまひとつ迫力に欠けるユリちゃんの剣幕に、アワアワと慌てふためく弱々な爺ちゃんになっちゃうくらいに。
だけど、ユリちゃんは一体なにに怒ってるんだろう?
社長と流血の闘いをした事か?
「爺ちゃんはさ、私や婆ちゃんの話はちゃんと聞いてくれたじゃない。なのにどうして他の人の話は半分くらいしか聞けないの? 私には人の話は最後まで聞かないとダメだぞなんて言うクセに。だから爺ちゃん、ちゃんと岡村さんに謝って!」
えぇ!!
僕ぅ!?
完全に傍観者と化していた僕は、突然の巻き込みに心臓がキューーーっと縮み上がった。
ユ、ユリちゃん?
なに言っちゃってるの?
そんでもって、お父さん、俯く振りして僕を睨むのやめてください、マジ怖いっす。
そうだ、社長! 社長は?
アウチ……ダメだ……すっごいニヤニヤしてる、あれ絶対助けてくれない時の顔だ。
そして窮地の僕にユリちゃんがトドメをくれる。
「岡村さんは昨日ママと婆ちゃんに会ったって言ってた。2人とも優しい人達だったって言ってくれたんだよ。そんなふうに言ってくれる人がママ達にひどいコトするはずないじゃない! なのに爺ちゃん、岡村さんの話最後まで聞かないでチェーンソーで脅すなんて、あれじゃあ話たくても話せないよ! さっきのは爺ちゃんが悪いんだから岡村さんに謝らなくちゃダメ!」
いいですって、大丈夫ですって、僕ぜーんぜん気にしてないですから!
むしろ、あんな格好良いチェーンソー間近で見せてもらって感謝してるくらい!
本心とは真逆だが、その場しのぎの事無かれトーク砲の発射を試みるも、口からは擦れた空気が漏れるだけ。
そうこうしてるうちに、お父さんが僕の目の前に立った。
後ろではユリちゃんが、爺ちゃんガンバレ! とエールを送っている。
ユリちゃんからお父さんの表情は見えない。
真っ直ぐに僕を見るその眼は……危険度メーターを完全に振り切っていた。
『岡村ぁ、まぁ、なんだ。ちったぁ俺も悪かった か も しれねぇ。だけどよ、オマエがさっさと貴子を消してねぇって事を言ってくれりゃあよ、話はややこしくならずに済んだんだ。だからな、岡村、オマエも謝れ。な?そしたらよ、許してやらんでもねぇからよ』
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