第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『最初におかしいと思ったのは光のショーを視た時だ』 バラカスが言うにはこうだった。 突然始まった光のショー。 最初、小さな光が蛍みたいに揺れたあと ”ダー” と ”ダン” を組み合わせた連続音が鳴った。 聞いてすぐには分からなかったが、後から思えば ”行くぜ” を意味するトンツー信号。 直後、数えきれない光が現れ圧巻の舞を視せたのだが……あの動きには覚えがあった。 あれは今人気のアイドルグループ、【A・G・L】の曲に合わせたオタ芸だ。 どこかのオタクが集まっての練習か? と思ったけれど、練習にしては曲を流さず打つのは不自然。 しかも、誰一人コールをしない。 ライブでは誰もかれもが叫んでいたのに。 そして撤収も早かった。 打ったのは一曲だけで終わればすぐ解散だ。 『偶然とは思えないだろ。黄泉にいるオタの中にはジャッキーのダチがいるし、ご丁寧にも俺らの真正面で打っていた。打ってる奴らが視えないように距離を取り、サッと打ってサッと帰る手際の良さだ。ありゃあ俺達に視せる為に打ったんだ。そうなると、あとから怪しく思えてきたのがシャボン玉だよ。白雪が ”バラカスとはしばらく会わない”、そう言い出したタイミングでどこからともなく飛んできて、しかも白雪の好きな柑橘の匂いまでさせている。でも確信は持てなかった。聞けば黄泉で流行ってて、そこらじゅうで吹いてるヤツがいるらしいからな。でもよ、お前が帰ったあと、そこにシャボン玉セットが転がってんの視たら……ああ、そういうコトだったのかって繋がったんだ』 話し終えたバラカスは、腕を伸ばしてウチのおでこをペシペシ弾く。 呆れた顔で、だけど笑ってこうも言った。 『ま、ありがとな。心配してくれたんだろう? それによ、あのシャボン玉があったから白雪も話しを聞いてくれたんだ。綺麗で良い匂いがして、俺でさえ視惚れたからな』 ウチはなんだか嬉しくなった。 勝手にしたコトなのに、そんな風に言ってもらえてホッとしちゃう。 『ううん、ウチもジャッキも大倉も、仲直りしてほしいなぁって、そればっかり願ってたんだ。本当に良かったよ。あーだけど、バラカスにはバレてたかぁ。そんな予感はしてたんだけど、やっぱりだった。ねぇねぇ、昨日、隠れてたウチを視付けたのもバラカスなの? ウチ、膝掛けかぶって髪だって視えないようにしてたのに』
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