第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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不思議に思ってた。 物陰に隠れてたんじゃないけど、それでも地面に伏せてたんだ。 しかも、あの時2人はちゅー寸前。 ウチに気付くヨユーはないと踏んでたのにな。 『いや、あれは最初に白雪が気が付いたんだ。小せぇ声で『後ろ視て、なにかいる』って言われてよ。で、振り返ったらお前が地面に伏せていた。白雪はマジョリカだと分かって悲鳴を上げたが、俺は別の意味で驚いた。頭に布切れかけて、でも所々髪がはみ出てるからキラキラしてて隠れてねぇ。ウソだろ? って思ったわ』 バラカスは片眉をあげてニヤリと笑う。 ヒト型のその表情はパンダの時と全然違う。 『そうなの? 惜しい! 髪さえ出てなければ……!』 『惜しくねぇよ、笑わせるな。確かに布切れかけてたけどよ、ありゃあ頭隠して尻隠さずだ。おまけにずっと足をバタバタさせてりゃあ、誰でも気付くっつの』 もう片眉もクィっとあげたバラカスはすんごくニヤニヤ笑ってる。 な、なんかクヤシイぞ。 『ウチ……足、バタバタしてた?』 『してた。あれで隠れてたつもりか? ケケケ! なっちゃいねぇな! 』 とうとうバラカスが声を上げて笑い出す。 な、なんだかすんごくクヤシイぞっ! 『うぅ……うぅ……その勝ち誇った顔! パンダの時よりにくたらしー! もー! ウチだってね、バラカスがちゅーしようとしてなければバタバタしなかったんだからね! バラカスが! 白雪ちゃんに! ちゅーーーーーってー!』 悔しまぎれに反撃すれば、意外や意外。 バラカスは真っ赤な顔で慌ててる。 口をパクパク、顔の前で両手をブンブン振りながら、 『パン! いや! ちが!』 カタコトにも程があるよ、マルチリンガルが大崩壊だ。 昨日、 白雪ちゃんもこんな感じだったな。 甘すぎるバラカスに照れてしまってタイヘンだった。 黄泉で最強の白雪ちゃん。 その白雪ちゃんをタジタジにさせるバラカス。 そのバラカスをもっとタジタジにさせるウチ。 …… ………… もしかして、今この瞬間、黄泉の国で最強なのはウチなのでは……! きゃー! マジョリカ・ビアンコ最強伝説ぅっ!
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