第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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◆ にくたらしかったバラカスが、照れてしまってタジタジで、白旗あげてオウチに帰った。 瞬間移動は使わない。 玄関開けて、そのまま右に歩き出す。 『じゃあな』 そう言ってから1歩2歩3歩4歩5歩____はい、到着。 近すぎて歩いて行ってもすぐ着いちゃう。 そう、ウチのオウチとバラカスのオウチはお隣同士なのだ。 学校の体育館をいくつも合わせたような。 バラカスのオウチは、ドアも窓も、部屋もキッチンも、なにもかもがすんごく大きい。 視上げるくらいの巨大なドア。 玄関から短い廊下を(バラカスから視ればだけどね)歩いてすぐにリビングがある。 広々としたスペースはフローリングでもラグでもなくて、床には芝生が敷き詰められている。 ふかふかだから裸足で歩くと気持ちが良いの。 リビング奥には横開きの扉があって、そこを開けて進んでいけばバラカスの仕事部屋に着く。 リビングよりも更に広い空間は、端から端まで機械が並んで、バラカスはしょっちゅうココで作業をしてるんだ。 なにをしてるのかは……正直よく分からない。 並ぶ機械はサーバーというもので、黄泉の国の公式機。 数はぜんぶで9999台。 その昔の100年前、バラカスだけで造ったらしい。 9999台って……イチパンで造る数じゃないよ。 大変だったろうな。 黄泉の国は理想郷。 指を鳴らせばなんだって手に入る。 服も、靴も、宝石も、ご馳走も、オウチでさえもだ。 陣を使えば黄泉中を行き来できるし、怪我をしたってオートリカバーが治してくれる。 こういう便利な機能が当たり前にように動き、滞る事がないのは、各専門職のみなさんと、それからバラカスのおかげなのかもしれない。 サーバーのコトはよく分からない、そもそも触らせてもらえない、でも、でもね、9999台のマシンの中でも1台だけ、ウチにとって特別なのがあるの。 それは第98号機、ジャッキの専用サーバーだ。 8年前、バラカスは黄泉の国に申請もせず許可も取らず、独断でジャッキに権限を付けた。 ウチの旦那さんはバラカスにとって息子だからって、現世に行って何かの役に立つようにって。
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