第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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とは言っても……始めたばかりで、なにがなにやら全然分からないんだけどね。 それでも頑張りたい、どうにかこうにか覚えたい……けど、修行の道は険しいのだ。 なんてたって先生が教えてくれない。 少し前だったかな。 バラカスに相談したけど、相手にしてもらえなかったんだ。 ____マジョリカには無理だ、 ____いや、お前だけじゃねぇ、 ____俺のマシンをいじれる奴なんざいねぇよ、 そう言って、触らせてもくれないの。 た、確かに……バラカスのサーバーはバラカスしか解らないけど、それにしたって話くらい、聞いてくれてもいいと思うの。 でも挫けないよ、1人でも勉強するんだから。 いつかパパをビックリさせて、ウチの本気を分かってもらうんだ。 それで、 ____やるじゃねぇか、 ____ここまで頑張るとは思わなかった、 ____仕方がねぇ、教えてやるよ、 って言わせるの。 それで、それで、教えてもらってメンテナンスはウチがして、……なんて。 ん……、ウチ、自分でもびっくりだ。 バラカスはウチには無理だと言ったのに、どうしても諦めきれない。 ウチってこんなにしつこい性格だったっけ? 昔のウチならとっくに諦めてるよ。 諦めないで粘るのは、ジャッキのコトが大好きだから。 それともうひとつ、これはどう考えても大倉の影響だ。 あの子はしつこい。 諦めるコトを知らないし、とにかく粘る。 それはもう呆れる程だ、……ほんとに、ほんとに、呆れるよ。 バラカスよりは短いけれど、大倉も片想いが長かった。 聞けば7年想ってたんだ。 何度ジャッキにフラれても、何度付き合えないと言われても、それでも、気持ちが消えるコトはなかったの。 告白だって7年間で30回。 大倉は、ぶーたれ顔で「全敗だった」とぼやいてたけど、30回ってすごいよね。 呆れちゃう、今なら(・・・)笑えるしつこさだ。 そういえば……昨日の祝杯でもしつこかったな…… ____いやーめでたい! 楽しい酒だ! ____ところでさ、マジョリカの次の休みはいつなんだ? ____なにぃ!? 明日ぁ!? っだよ、そーゆーの早く言えよー! ____だったら今から口寄せするわ、現世(コッチ)で顔視ながら飲もう! ____えぇ!? なんでダメなの? 明日は白雪と会うから? ____でもさ、会うのって朝イチじゃないんだろ? ____現世(コッチ)で飲んで、昼頃帰ればいいじゃんか、 ____えぇ……? ダメなの? なんで?  ____大事な話だからバタバタしたくない? ____そか、そうなのか、大事な話なら仕方がない、 ____ダイジョウブ、我慢できるよ心配するな…… ____あ……でもちょっとは心配してもいいよ、 ____気が変わったら口寄せするし…… これを何度もリピートちゃって、しまいにはジャッキに叱られションボリしてた(毎回すぐ立ち直るけど)。 ジャッキにしつこく、ウチにもしつこい、いつだってこの調子。 でもね、昨日のなんてマシな方なの。 あの子が本気を出したら、あんなものでは済まないからね。 一度だけ……本気を出されたコトがあるよ。 大倉と家族になる前、ウチが初めて現世に行った日の事だ。 あの夜の現世には、ウンザリするくらい、怖くて泣いてしまうくらいの悪霊達がいた。 凶悪で、凶暴で、平気で嘘をつき、嬉々として襲ってくる連中だ。 大倉は、悪霊達からウチを守る為に戦ったんだ。 殴られても蹴られても、罵倒されても挫けず……そう、ウチを守る為だけに。 しつこく粘って、何度も何度も喰らい付き、なにがあっても諦めなかった。
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