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今ではもう通い慣れた現世だけれど、初めて行ったあの夜は、酷く緊張したのを覚えてる。
ちっちゃなヤヨイに連れてもらって、イキビトの国____現世の地に立った時、そこで初めて大倉に会ったんだ。
寂れた公園の真ん中で、背筋を伸ばして立っている……この女性が……大倉弥生。
ずっと前から声だけは知っていたけど、顔を視るのは初めてで……ウチは、釘付けになっていた。
なんて……綺麗な人なの。
猫を思わせる整った目鼻立ち。
白い肌に長い艶髪。
髪と同じ黒い瞳は、気を抜いたら吸い込まれてしまいそう。
細いけれど筋肉質な身体つき。
よく視れば、あちこちに細かい傷がある。
きっと……守られるだけじゃない、誰かを守れる女性なんだ。
ウチとぜんぜん違う____
ジャッキは本当はこういう女性が好きなのかな。
大人っぽくて、綺麗で、強くて、……ウチは心が折れそうになった、けど、負けないって思ったの。
だって悪いのは大倉だ。
ウチはジャッキの奥さんで、大倉はそれを知ってるはずなのに、そんな子じゃないと思っていたのに、なのに、ジャッキを好きになるなんて許せない。
顔を視るほど腹が立った。
長い髪も、綺麗な目も、そのすべてがジャッキに愛されてるのかと思ったら、頭の中が沸騰して、冷静さを失って、感情的になって……誰かに対してあんなに声を荒げたのは、生きていた頃を含めてもあの夜だけだ。
大倉はどんな気持ちで責められていたんだろう?
あの子は何を言われても、自己弁護をしなかった。
代わり、言葉にしたのは、
____アタシがみんな悪いんだ、
これだけだった。
……
…………
………………
あの時のウチはすごく嫌な子だったと思う。
思い出すと落ち込むくらいに酷い事を言った、必要以上にあの子を責めたんだ。
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