第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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公園での話し合い。 これは途中で中断された。 それどころじゃなくなった。 ジャッキが危ない。 それが分かったのは、ウチが言った一言だった。 ____バラカスのサーバーにアクセスログがないの、 ログがないという事は、霊力(ちから)を得ていないという事だ。 霊力(ちから)がなければ霊媒師は務まらない。 その夜、ジャッキは現場にいるはずだった。 霊力(ちから)なくしてどうやって仕事をしてるのだろう? それから大倉は早かった。 どこかに一本電話をかけて、誰かと激しくやりあって、みるみるうちに表情(かお)が変わって、そして、 「霊力(ちから)の出所が分かったよ。アイツ、自分の中に悪霊を憑り込んでるんだ。このままじゃ危ない、すぐに助けに行く」 力強くそう言った。 まるで別人だった。 ウチに責められ謝るばかりの大倉は、力が漲り眼光鋭く、すごく大きく視えたんだ。 その時、最初に感じた印象を思い出したの。 大倉は、誰かを守れる強い女性(ひと)。 ウチと全然違う女性(ひと)。 ウチは……ウチはさ、大倉みたいに強くはないけど、ジャッキが危険というなら、ウチだって助けに行きたい、大事な人を守りたい。 無理を承知で頼み込んだ、ウチなんかが一緒に行ったら足手まといになるのは分かってる、でもお願い、ウチも一緒に連れてって……! ああ、嫌な子だな。 必死に頼みながら、心の奥で自己嫌悪に陥った。 大倉にさんざん酷い事を言ったのに、こんな時だけ頼み事をするなんて、図々しいし身勝手すぎる。 断られるかなって……思った。 邪魔だ、足手まといだ、そう言われると思っていたのに…… 「ジャッキーが心配なんだろ? そりゃそうだ。傍にいたいに決まってる。分かった、連れてくよ。大丈夫、安心しろ。マジョリカはアタシが守る。命に代えても守るから」 さっきよりも力強く、大倉はそう言ったんだ。
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