第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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大倉は有言実行の人だった。 マジョリカを守る____ その約束は悪霊達を滅するたびに果たされた。 細い身体でカタナを握り、百二百を優に超える悪しき(もの)を、ひっきりなしに斬り捨てる。 飛んで跳ねて振り切って、戦うカタナはまるで生き物のように視えた。 綺麗……不謹慎だと思うのに、そう思わずにはいられない。 白雪ちゃんとは違った強さに、ウチは目が離せなくなっていた。 滅した霊が山になる程戦って、それでも悪霊達は減らなかった。 次から次へと現れては襲ってくるの。 ウチは心配になった。 いくらあの子が強くても、現世にオートリカバーはない。 生身の身体は嫌でも疲労が溜まってく。 辛いはずなんだ、休みたいはずなんだ、なのに大倉は止まらない。 休む事なく戦って弱音の一つも漏らさない。 ウチにも何も言ってこない。 ____アタシはアンタを守ってやってるんだ、 ____悪霊共を滅してやってるんだ、 大倉はそういう言葉を一切口にしなかった。 どうして……なにも言ってこないのだろう? 戦ってるのは大倉で、大変なのも大倉で、痛いのも大倉だ。 ぼやいたっておかしくない、文句を言ってもおかしくない。 …… ………… ………………そもそも、 ”守る” なんて口約束で強制力はない。 約束を守るも破るも大倉の意思一つ。 圧倒的な霊力(ちから)を持つ大倉弥生。 チカラなんて何も持っていないマジョリカ・ビアンコ。 …… ………… ………………大倉は考えないのかな? たとえば…………ウチがいなくなればジャッキと一緒になれるのに、とか。 マジョリカを守る____ この約束を破れば、もしくは守れなかった振りをすれば、大倉はジャッキを手に入れる事が出来る。 大倉くらい強ければそんなの簡単じゃない。 そういう事、考えないのかな?
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