2366人が本棚に入れています
本棚に追加
大倉は有言実行の人だった。
マジョリカを守る____
その約束は悪霊達を滅するたびに果たされた。
細い身体でカタナを握り、百二百を優に超える悪しき霊を、ひっきりなしに斬り捨てる。
飛んで跳ねて振り切って、戦うカタナはまるで生き物のように視えた。
綺麗……不謹慎だと思うのに、そう思わずにはいられない。
白雪ちゃんとは違った強さに、ウチは目が離せなくなっていた。
滅した霊が山になる程戦って、それでも悪霊達は減らなかった。
次から次へと現れては襲ってくるの。
ウチは心配になった。
いくらあの子が強くても、現世にオートリカバーはない。
生身の身体は嫌でも疲労が溜まってく。
辛いはずなんだ、休みたいはずなんだ、なのに大倉は止まらない。
休む事なく戦って弱音の一つも漏らさない。
ウチにも何も言ってこない。
____アタシはアンタを守ってやってるんだ、
____悪霊共を滅してやってるんだ、
大倉はそういう言葉を一切口にしなかった。
どうして……なにも言ってこないのだろう?
戦ってるのは大倉で、大変なのも大倉で、痛いのも大倉だ。
ぼやいたっておかしくない、文句を言ってもおかしくない。
……
…………
………………そもそも、
”守る” なんて口約束で強制力はない。
約束を守るも破るも大倉の意思一つ。
圧倒的な霊力を持つ大倉弥生。
チカラなんて何も持っていないマジョリカ・ビアンコ。
……
…………
………………大倉は考えないのかな?
たとえば…………ウチがいなくなればジャッキと一緒になれるのに、とか。
マジョリカを守る____
この約束を破れば、もしくは守れなかった振りをすれば、大倉はジャッキを手に入れる事が出来る。
大倉くらい強ければそんなの簡単じゃない。
そういう事、考えないのかな?
最初のコメントを投稿しよう!