第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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白雪ちゃんじゃないけれど。 あの時、頭の中はグチャグチャだった。 浮かんだ疑問に答えが出ないし、考えがまとまらない。 ジャッキの事、大倉の事、ウチの事____ 現世に来てから色んな事がありすぎて、心がちっとも追い付かない。 悶々とする中で、ひたすらあの子を目で追った。 ボロボロの大倉は、殴られても蹴られても、悪霊達に酷い事を言われても、それでもカタナを降ろさなかった。 ウチの安全と引き換えに、惜しげもなく身を削り続けていた。 …… ………… ねぇ、なんで……? カタナを降ろせば楽になるのに。 口約束を破った所で、そんなの誰にも責められないよ。 だってもう、ボロボロのフラフラだ。 身体中、傷だらけの泥だらけ。 それなのに諦めない。 何度も何度も、倒れた数と同じ分だけ立ちあがり、カタナを構えて走り出す。 ねぇ……ねぇ、 どうしてそこまでするの……? どうしてそこまで出来るの……? そうまでする意味がある……? ウチ、大倉に酷い事をいっぱい言ったよ。 大声で怒鳴ったし、睨みつけもした。 言った事は後悔してない。 ウチには理由があったんだもの、ジャッキを返してほしい、その一心だった。 でも……でもさ、必要以上に責め立てたんだ。 感情だけで怒鳴ってしまった。 責められた大倉は言い訳なんてしなかったけど、思う事はあったはずだよ。 なのに……ねぇ、なんで? その気になれば、ウチを滅する事も出来るのに、それだけの霊力(ちから)があるのに、そうすればジャッキと一緒になれるのに、だけどそうはしないよね。 それどころか、あんなになっても守ってくれる。 しつこいくらい、諦める事を知らないみたいに。
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