第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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なんで、どうして、____さっきから同じ疑問の繰り返し。 頭の中は行ったり来たりで落ち着かない。 そんな中、とうとう大倉が倒れた。 満身創痍。 歩く事もままならない大倉は、ジャッキに身体を抱えられ、ウチの元へとやってきた。 そして、「ごめんね」って言ったんだ。 最初、意味が分からなかった。 なにがごめんなの? 謝るのはウチの方だよ。 大倉だけを戦わせ、ウチ1人が安全な所に隠れてた。 こんなになって、こんなにさせて、 本当に、本当にごめんね。 …… ………… ………………ああ、もう限界だ。 泣いちゃダメと分かっているのに涙が溢れてとまらない。 大倉があまりにも弱ってる、あまりにも小さく視える。 それと……この子が言った「ごめん」の意味が分かってしまった。 きっと、ジャッキに抱えられてる事に対して謝ってるんだ。 ウチに気を遣ってるんだ。 こんな時に、そんな事考えなくていいのに。 もう守らなくていいよ、充分だよ、このままじゃ死んじゃうよ、そんなのやだよ。 これ以上は戦えない____ そう判断した大倉は、ウチをジャッキのオウチに逃がそうとした。 正直……迷った。 ウチがいても結局負担を増やすだけ。 だったら、大人しく離脱した方がいいのかな。 それとも、ここに残って出来る事をした方がいいのかな。 でも……”出来る事” ってなんだろう? ウチには霊力(ちから)もなければ腕力(ちから)も無い……役立たずだ。 だけど……それでも……何か、何かあるはずんなんだ。 考えよう、時間がない、状況をよく視て、頭の中を整理して、急いで、……ああでも焦っちゃだめだ、焦れば間違う、失敗する…………でもね。 時間が無いその中で、ベストに近い策を練る。 ダイジョウブ、そういうのは慣れてるよ。 ウチは鍛えられたんだ。 光道(こうどう)でこの10年。 大倉弥生は”無茶ばかりを言う霊媒師” として有名だ。 誰も対処出来ない、出来るのはウチ1人。 この子の要求にずっと応えてきたんだもの。 怖いけど、自信はないけど……思い出せ! 思考を止めるな!  ウチに出来る事!  ウチにしか出来ない事を視つけだせ! ジャッキと大倉、2人から話を聞き出しフル回転で考えた。 考えに考えて、その結論が……【闇の道】を呼ぶ事だった。 まさにあの時____ ジャッキのコトバを借りるなら、”運命の分岐点” だったのだと思う。 もし、別の選択をしていたら、ウチがオウチに戻っていたら。 大倉と家族になる事はなかっただろう。
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