第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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呼び出した【闇の道】。 ウチは恐怖した。 視るのは初めてじゃない。 【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】に入ってすぐの頃、研修で視に行った事があるからだ。 研修では、安全を考慮して充分な距離を取っていたし、教官である白雪ちゃんに抱き着く事も出来た。 あの時も怖かったけど……伸ばした終点、現世から視る【闇の道】は、その比じゃなかった。 それでも、ウチはお腹の底にチカラを込めて、顔を上げ、精一杯胸を張った。 【闇の道】を呼びだし、悪霊達を道に乗せ、最後は道を稼働させる。 この作業が出来るのは【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】のウチだけで、ウチにしか出来ない事だ。 やっと……やっと、ウチも役に立てるんだ。 これ以上、大倉に負担をかけたくない、休ませてあげたい。 声が震えないように気を付けた。 大きく息を吸い、大倉みたいに背筋を伸ばす。 あとは言霊を唱えれば【闇の道】は本格的に稼働する。 上手く言えるかな……、不安だな……、不安だけど、でも、しくじる訳にはいかない。 これが大倉を、ジャッキを、岡村を守る事に繋がるから、だから頑張る……! 『現世、ここに拘束されるすべての悪霊達へ告ぐ! あなた方は今を生きる者達へ害を成し、罪なき生者の命も狙い脅かす! 今夜それを確認し、黄泉の国【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】所属マジョリカ・ビアンコは、地獄流しが適切だと判断した! 今から全員……地獄へ流します!』 ……言えた…………! 唱えた言霊に【闇の道】は頷いたように視えた。 そして始まる____ 道は悪しき(もの)を捕らえようと執拗だった。 1体、また1体と、次から次へを触手を伸ばして引きずり込んだ。 耳を塞ぎたくなるような悲鳴の輪唱。 さすがの大倉も愕然としているし、岡村は吐いてしまった。 それから少しして、ジャッキは身体の中から憑りつく悪霊を引きずり出した。 闇の触手は見逃す事なく拘束し、容赦もないまま【闇の道】へと引きずり出した。 それを視た時、ああ……これで終わるんだって、思ったの。 ジャッキは解放された、悪霊達がいなくなれば大倉は戦わなくていい。 みんなでオウチに帰ろう、それで……少し眠ったら話をしよう、と、考えていた時。 ジャッキーに憑りついていた悪霊が、ウチを道連れにするために、ウチの霊体(からだ)を乱暴に掴んだんだ。
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