2366人が本棚に入れています
本棚に追加
もう駄目だと絶望した時。
ウチはまた自分の目を疑った。
走るジャッキは大倉を抱きかかえ、その身体を力一杯上に投げた。
投げられた大倉は大きな銃を霊力で構築、迷う事無く地面に撃ち込み、その衝撃を利用してウチに向かって飛んだんだ。
『大倉ぁっ!』
なにがしたいか察しがついた。
ウチは霊体をくの字に曲げて、下に向かって手を伸ばす。
互いの手を求め合い、互いの手を掴もうと、この時確かに、2人の気持ちは1つだった、……………………なのに…………ああ駄目……!
あと数センチが届かない!
僅かな隙間、ほんのちょっと、あと少しが届かなくって、手は掠りそうで掠らなかった……!
指先が空振って、互いの手を掴めないまま大倉が降下しだす。
生身の身体は重力には逆らえない、ウチからどんどん離れてく。
駄目だ、やっぱり駄目だ、ウチは地獄に流されるんだ、
やだよ、怖いよ、悪い事してないのに、悔しいよ、悲しいよ、涙が出るよ、
8年ぶりにジャッキに逢えた、なのにこんなの……サヨナラさえも言えてない、バラカスも白雪ちゃんにももう逢えない、それと大倉、大倉には____ああでももう時間がない。
絶望が湧き上がる、ウチはもう俯く事しか出来なくて、力無く頭を下げて、それで、その時、涙で視界が歪む中、落ちてく大倉と目が合った。
え……? と思った。
心臓がバクバクいって暴れだす。
なんで、どうして、もう何度目だろう。
ウチは再び自分の目を疑った。
信じられない。
大倉は折れていなかった。
絶望的な状況なのに、どんどん距離が広がるのに。
あの子の目は獣のように鋭く光って、眉間と鼻に深いシワを寄せていた。
怒ったような顔をして、ウチと、ウチの後ろの悪霊を視て、その後すぐに口の中で何かを呟いた。
途端、握った拳が紫色に光を放つ。
嘘でしょ、でもそうだ。
まだだ。
大倉は諦めてない。
来る、ウチを助けにもう一度来る。
最初のコメントを投稿しよう!