第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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もう駄目だと絶望した時。 ウチはまた自分の目を疑った。 走るジャッキは大倉を抱きかかえ、その身体を力一杯上に投げた。 投げられた大倉は大きな銃を霊力(ちから)で構築、迷う事無く地面に撃ち込み、その衝撃を利用してウチに向かって飛んだんだ。 『大倉ぁっ!』 なにがしたいか察しがついた。 ウチは霊体(からだ)をくの字に曲げて、下に向かって手を伸ばす。 互いの手を求め合い、互いの手を掴もうと、この時確かに、2人の気持ちは1つだった、……………………なのに…………ああ駄目……! あと数センチが届かない! 僅かな隙間、ほんのちょっと、あと少しが届かなくって、手は掠りそうで掠らなかった……! 指先が空振って、互いの手を掴めないまま大倉が降下しだす。 生身の身体は重力には逆らえない、ウチからどんどん離れてく。 駄目だ、やっぱり駄目だ、ウチは地獄に流されるんだ、 やだよ、怖いよ、悪い事してないのに、悔しいよ、悲しいよ、涙が出るよ、 8年ぶりにジャッキに逢えた、なのにこんなの……サヨナラさえも言えてない、バラカスも白雪ちゃんにももう逢えない、それと大倉、大倉には____ああでももう時間がない。 絶望が湧き上がる、ウチはもう俯く事しか出来なくて、力無く頭を下げて、それで、その時、涙で視界が歪む中、落ちてく大倉と目が合った。 え……? と思った。 心臓がバクバクいって暴れだす。 なんで、どうして、もう何度目だろう。 ウチは再び自分の目を疑った。  信じられない。 大倉は折れていなかった。 絶望的な状況なのに、どんどん距離が広がるのに。 あの子の目は獣のように鋭く光って、眉間と鼻に深いシワを寄せていた。 怒ったような顔をして、ウチと、ウチの後ろの悪霊を視て、その後すぐに口の中で何かを呟いた。 途端、握った拳が紫色に光を放つ。 嘘でしょ、でもそうだ。 まだだ。 大倉は諦めてない。 来る、ウチを助けにもう一度来る。
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