第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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正直……痛いし苦しいよ、でも言わない。 こんな痛み、大倉に比べたら____ 『ダイジョウブだよ、でもお願い! 早く来て!』 精一杯見栄を張って答えると、そこから大倉は早かった。 両手で鎖をしっかり掴むとあっという間に上まで登り、凄みの声で言ったんだ。 「マジョリカを離して、地獄逝きはアンタだけだよ」 この時、涙が一気に溢れ出た。 来てくれたのが嬉しくて、独りじゃないのが心強くて、感謝して、だけどその分辛くもなった。 違ったら良かった、ウチと大倉の好きな人。 ジャッキじゃなければ良かったのに。 『邪魔するなよぉぉぉ! 俺はタダで地獄にはいかないからなぁぁぁ! 道を呼んだこの女を許さないぃぃぃ! 一緒に連れて行くぅぅぅ! 邪魔するなら弥生も道連れだぁぁぁ!!』 絶叫は耳元で、その息はうんざりするほど生臭い。 悪霊はウチを決して離さなくって、胸の下に回る腕が一層強く締め上げた。 後ろを視れば【闇の道】までだいぶ距離が削れてしまった。 お願い……急いで大倉、 その大倉はカタナも出さず、眉間と鼻にシワを寄せ黙り込んでいた。 何か……迷ってるように視える、……どうしたの? 何かあったの? なんで攻撃しないの?  疑問に思って考えて、そして分かってしまった。 ウチのせいだ……ウチが悪霊(こいつ)に捕まってるから、斬る事が出来ないんだ。 それに気付いて血の気が引いた。 大倉……来てくれたのは良いけれど、これじゃあなんにも出来ないよ。 どうしよう……やっぱり駄目かも……このまま行ったらウチも大倉も助からない……どっちも……そう2人共だ。 もう一度後ろを視れば【闇の道】はゴボゴボと煮えたぎり、手招くようにマグマが踊る。 怖い、怖いよ……でも……でも……もし、本当に駄目だとしたら。 頑張っても助かる見込みがないのなら。 その時は____
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