第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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その時は____ 落としてしまおう。 【闇の道】に捕まる前に、ここから大倉を落とすんだ。 ウチと大倉。 今の2人は霊鎖によって繋がってるけど、大倉側は手に持ち握っているだけだもの。 なんとかその手をほどけば良い。 ウチと離せばここから落ちる、生者は重力に逆らえない。 大丈夫、高さはあるけど死んでしまう程じゃない。 それにきっとジャッキが受け止めに来るはずだ。 あ……考えたら霊体(からだ)が震えてきちゃったよ。 正直怖いし地獄になんか逝きたくない。 でもさ、このままだとウチのせいで2人共助からない。 そうなれば悪霊(こいつ)が喜ぶ、それがすごく悔しいの。 それならせめて大倉だけでも逃げてほしい。 悪霊(こいつ)に捕まってるのはウチだけで、大倉はそうじゃない。 助かる可能性はウチより高い。 いいんだ、この子は何度も何度も助けてくれた。 ウチだって1回くらいは助けたい。 最後まで頑張るけど、諦めないけど、でもね、もしそれでも駄目だとしたら…… 霊力(ちから)もなければ腕力(ちから)も無い、これがウチなりの ”諦めない” だ。 そう覚悟を決めた矢先。 突然、悪霊が勝手な事を言い出したんだ。 『……! そうだ! 髪! 弥生の髪を寄越せ! 心臓は無理でも髪くらいなら、今ここで吞む事が出来る、弥生の髪を呑み込んで、霊力(ちから)をつければ逃げられるかもしれないっ!』 なにを言ってるの……髪なんてあげるはずがないじゃない……! あまりにも図々しい、ウチがすっかり呆れていると、何を思ったのか大倉がとんでもない事を言い出した。 「髪がそんなに欲しいのか。オマエごときがアタシの霊力(ちから)を扱えるとは思えないけど、試してみるか?」 思わず眉間にシワが寄る。 一体どういうつもりなの? しかもだ。 大倉はおもむろに、手に持つ霊鎖を自分の腰に巻き直し、きつくガッチリ固定した。 ばっ……! 何考えてるのよ! そんな事をしたら、あんたを逃がせないじゃない……! …… ………… ………………
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