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その時は____
落としてしまおう。
【闇の道】に捕まる前に、ここから大倉を落とすんだ。
ウチと大倉。
今の2人は霊鎖によって繋がってるけど、大倉側は手に持ち握っているだけだもの。
なんとかその手をほどけば良い。
ウチと離せばここから落ちる、生者は重力に逆らえない。
大丈夫、高さはあるけど死んでしまう程じゃない。
それにきっとジャッキが受け止めに来るはずだ。
あ……考えたら霊体が震えてきちゃったよ。
正直怖いし地獄になんか逝きたくない。
でもさ、このままだとウチのせいで2人共助からない。
そうなれば悪霊が喜ぶ、それがすごく悔しいの。
それならせめて大倉だけでも逃げてほしい。
悪霊に捕まってるのはウチだけで、大倉はそうじゃない。
助かる可能性はウチより高い。
いいんだ、この子は何度も何度も助けてくれた。
ウチだって1回くらいは助けたい。
最後まで頑張るけど、諦めないけど、でもね、もしそれでも駄目だとしたら……
霊力もなければ腕力も無い、これがウチなりの ”諦めない” だ。
そう覚悟を決めた矢先。
突然、悪霊が勝手な事を言い出したんだ。
『……! そうだ! 髪! 弥生の髪を寄越せ! 心臓は無理でも髪くらいなら、今ここで吞む事が出来る、弥生の髪を呑み込んで、霊力をつければ逃げられるかもしれないっ!』
なにを言ってるの……髪なんてあげるはずがないじゃない……!
あまりにも図々しい、ウチがすっかり呆れていると、何を思ったのか大倉がとんでもない事を言い出した。
「髪がそんなに欲しいのか。オマエごときがアタシの霊力を扱えるとは思えないけど、試してみるか?」
思わず眉間にシワが寄る。
一体どういうつもりなの?
しかもだ。
大倉はおもむろに、手に持つ霊鎖を自分の腰に巻き直し、きつくガッチリ固定した。
ばっ……! 何考えてるのよ!
そんな事をしたら、あんたを逃がせないじゃない……!
……
…………
………………
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