第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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…… ………… ……………………はぁ、 あの日のコト、思い出すと眩暈がしちゃう。 そりゃあね、ありがたいと思ってる。 2人一緒に助かったのは、あの子のおかげだもん。 でもさぁ、ちょっぴり大倉怖かった。 あまりにも衝撃的で、たまに夢に出てくるの。 ウチを離さないまま、大倉に髪を寄越せと騒ぐ悪霊。 大倉は ”髪を渡せばマジョリカを離すかも!” と、迷う事なくナイフでザクザク切ったんだ。 長くてキレイな髪だったのに、束で掴んで、鏡も視ないで、すんごく真顔で、一心不乱に切っていた。 衝撃シーンを至近距離で視せつけられて、忘れたくても忘れられない。 【【闇の道】】   ↑   ↑   ↑ (悪霊)←『髪寄越せぇぇぇ!』 (ウチ)←後ろからガッチリ固定されてる   ┃ ←女2人は霊鎖で繋がってる (大倉)←髪…ザクザクザクザクザクザクザク…… うん……こんな感じだったな。 ホントにあの子は無茶ばっかり。 ウチを何度も助けてくれた。 最初の方は颯爽と、最後の方はフラッフラになりながら、諦めず、しつこいくらいに来てくれた。 あはは、思い出すと眩暈がするし、胸が熱くて涙も出ちゃう。 涙と言えば……あのあとヤヨイが大変だったなぁ。 ヤヨイは大倉が大好きで、好きすぎちゃうから、服も髪も、お揃いを譲らない。 黒のワンピに長い髪、2人はいつでもお揃いだった……のに。 ウチもジャッキも一緒にいた日。 いつになく弱気な顔の大倉は、 「これからヤヨちゃんを呼び出すから、はいコレ」 と、霊力(ちから)で構築した大きな傘をくれたんだ。 広げてみるとウチとジャッキ、大人2人が余裕で入れる大きさだけど、なんで傘? 雨じゃないし、そもそもココは家の中だし、……と意味が分からないでいた。 意味が分かったのはヤヨイを呼び出してすぐのコト。 現れたチビッ子を「ヤヨちゃんゴメン!」と大倉が抱きしめた。 言われたヤヨイは目を真ん丸に視開いて、大倉の短い髪をさわって、自分の長い髪もさわって、しばらくそうしていたけれど、みるみるうちに涙が溜まり、そして………… 【うわあぁぁぁぁぁん カミやよいのかみがみジかくなったぁぁぁぁぁぁ】 と豪雨のように大泣きしたの。 大きな目からは涙が溢れてとまらないし、天井からはヤヨイのコトバが文字となって降ってくるんだけど……この時、謎がとけた。 ああ、そうか、だから傘をくれたのか。 ヤヨイのコトバは傘にあたってコロコロ落ちて、床にどんどんたまってく。 紫色に優しく光り、それはとってもキレイだけど……だめ、かわいそうで視てられない。 大倉の髪に相当ショックを受けたみたいで、ひっくり返って泣いている。 どうしよう……ウチのせいだよ。 大倉は謝るばかりでオロオロしてた。 無理もない、また伸ばそうにも生者だもん。 戻るまでには時間がかかる。 今すぐどうこう、したくたって出来ないの。 この大問題を解決したのは……大倉でもウチでもなくてジャッキだった。
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