第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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わんわん泣く子の声の代わりの光る文字。 途切れるコトなく天井(うえ)から降って、あっという間に床は一面、ヤヨイのコトバ(・・・・・・・)で埋め尽くされた。 どうしよう、ヤヨイがぜんぜん泣き止まない。 どうしたら泣き止むかな、なにをしたら笑ってくれるかな。 考えながらポッケの中に手を入れた。 なにかないかな、ヤヨイが喜びそうなモノ、笑ってくれそうなモノ。 ゴソゴソゴソ 中身を全部出してみたけど大したモノがない。 あるのはハンカチとシュシュとリボン、それだけだ。 アメとかグミとかお菓子があれば良かったのにな。 「マジョ、それは?」 同じ傘で一緒に座る、ジャッキがウチにそう聞いた。 『あ……うん。あのね、ヤヨイが喜びそうなモノを探してたんだ。ほら、ここが黄泉なら好きなモノを出せるけど、現世じゃウチ……』 そうなのだ。 霊力者でないウチは、現世でモノの構築が出来ない。 前に一度、試してみたけど希望のモノは作れなかったし、形にすらならなかった(キラキラ光る丸めたティッシュみたいなのが出来た)。 『だからね、持ってるモノでヤヨイにあげられるモノがあればなぁって。でもこんなモノしかなかったよ』 ウチがしょんぼりそう言うと、ジャッキはそれをジッと視て、 「…………ん、なるほど。花柄のハンカチにピンクのシュシュ、それと水色のキレイなリボンか。マジョ、十分だよ。これでヤヨちゃんを喜ばそう」 と笑い、「ちょっと待ってて」と部屋を出ていった。 ジャッキは何をするのかな……? ウチは密かにワクワクしながら待ってると、10分くらいで戻ってきたの。 手にはフィギュアを持っていて、前に視せてもらった仕事用の物だった。 「マジョ、このフェギュアに触ってごらん」 いたずら顔で、ズイッとフィギュアを差し出すけどさ。 無理だよ、だってウチはユーレーだもん。 すり抜けるに決まってる。
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