第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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さわれっこない、そう思ってウチがモジモジしていると…… 「もしかして触れないと思ってる? 大丈夫、フィギュア(これ)の仕様は特別なんだ。だってほら、」 子供の顔で笑うジャッキは、言いながら、フィギュアを下に降ろしたの。 床の上はヤヨイのコトバ(・・・・・・・)でデコボコしてて、置かれたフィギュアは手足が曲がってヘンな恰好になっている。 んも、扱いが雑だなぁ。 フィギュアはジャッキの大事でしょ、仕事で使うモノでしょ……なんて、奥さんらしく(?)口煩く言おうとした時だった。 ポォォォ…… 突然フィギュアが発光した。 光るだけじゃない、クタっとしてたはずなのに、ムクッと起き出しトコトコ歩いてウチの傍までやってきた。 そして、小さな両手をバンザイみたいに上にあげると、ウチの足をペチペチ叩き出したんだ(痛くはない)。 『わぁ! くすぐったっ! え? なんで? どうして? フィギュアがウチにさわってる!』 びっくりした、不思議だしオモシロイしで、思わず声が大きくなった。 「あはは、おどろいたかい? 視るのは初めてだもんなぁ。前に話しただろう? 自分は依代フィギュアに憑依して現場に行くって」 『あー! そうだ言ってた! そか、こうやってフィギュアに入り込むんだ! ウチ初めて視たよ、ジャッキすごいよ!』 ウチは大興奮だった。 聞くと視るとじゃぜんぜん違う。 フィギュアが動いて、死者のウチにさわったの。 そんなの、岡村にしか出来ないと思ってた! 「言っただろう? このフィギュアは特別仕様なんだ。マジョがユーレーでもフィギュアでなら触れるの。どうして触れるか……仕組みが知りたい? でもそれは今度ね。先にヤヨちゃんを元気にしなくちゃ」 そう言って、ジャッキのフィギュアはさらにトコトコ歩き出し、泣いてるヤヨイの隣に立った。 【やよいのかみ てんテンてんミジかくなったおそろいじゃなくなた】 べそをかくチビッ子。 ジャッキは明るく声を掛ける。 「久しぶりだねぇ、元気にしてたかい? 自分、ヤヨちゃんに会えて嬉しいよ」 ピタ……、 あ、ヤヨイの動きがとまった。 ひっくり返った格好で、顔だけを横向きにジャッキのフィギュアを視つめてる。 同時、天井(うえ)から文字が降ってきたのだが、 【じゃっきジャっき やよいのかみ イマスグながくシテ】 んー……ヤヨイごめんね、それはちょっと無理かな。
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