第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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【すースーやよいとヤヨイおそロい まじょりかもおそろい カミゆわくの】 え? それはどういう、 ウチが聞くよりジャッキの方が早かった。 大好きな旦那さんは、 「あー! ヤヨちゃんに先越されたぁ! 自分も言おうとしてたのにぃ!」 なんて、大袈裟にジタバタしたあと、「マジョ、コッチに来て」とウチを傍に座らせた。 あ……! という間だった。 ジャッキのフィギュアがウチの肩に飛び乗ると、上へ下へ跳ねまわり、目にも止まらぬ早さでもって髪をいじって、花柄のハンカチをクルクル丸めて手に持って……それで、それで…… 「マジョリカかわいー!」 【カワー!】 大倉の声とヤヨイの文字がほぼぴったりに重なった。 ウチの肩からフィギュアが降りた。 んと……首元がスースーするよ……ドキドキしながら頭をさわると、ウチの髪は高い位置でポニーテールになっていた。 あ……これってお揃いだ。 ヤヨイと大倉、それとウチ。 3人でお揃いになったんだ。 結わいてくれた旦那さんは、なんでか泣きそうな顔をしていた。 膝を着き、さわれないけどウチの頬に手を添えて、優しい目をして言ったんだ。 「ああ、女神……とっても綺麗だよ」 ドキンとした。 初めて出逢った8年前、ジャッキはウチを ”女神” と呼んでいたんだ。 あの頃みたいでドキドキしちゃう。 顔が、熱くなる。 【まじょりかマジョリカ】 ヤヨイの文字が跳ねるように落ちてきた。 それで、次の瞬間……ウチの胸にチビッ子が飛び込んできたの。 【おそろいすースーまじょりかもやよいもヤヨイもジャッキも】 ぱぁぁぁと顔を輝かせ、視あげるヤヨイと目が合った。 この時、ウチはすんごく驚いたんだ。 ヤヨイってこんなにやわらかかったの? それに……甘くて良いにおいがするよ。 【まじょりかありがとダイスキ】 文字を降らせたチビッ子は、大倉にしてたみたいにウチの胸に顔を押し付けしがみつく。 え……ああ……もう……はぁ……可愛い……可愛いよぉぉぉぉ! 愛しさが込み上げる、ううん、込み上げるなんてもんじゃない。 ぶわんぶわんと溢れ出し、ウチもヤヨイを抱きしめた。 ん……やわらかくて良いにおい。 ぎゅーっとしたら幸せで、自然と顔が笑顔になるの。 ヤヨイはすごいな。 さっき感じた ”淋しい” とか ”羨ましい” とか、そんなのぜーんぶ吹き飛んじゃったよ!
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