第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『マ、マーちゃん?』 ……はっ! いけない! 白雪ちゃんの長い髪に驚きすぎて見惚れてしまった! 『ご、ごめん! ねぇ、入って。すぐお茶淹れるから』 白雪ちゃんの手を引っ張って、オウチの中に入ってもらう。 鋼の手首がほんのり熱い、チラリと視れば頬も赤くなっている。 これは……恋する女の子の顔だよ。 『ねぇ、このお茶飲んでみて。日本の緑茶っていうんだよ。香りが良くておいしいの』 指を鳴らして緑茶を構築……ではなく、茶葉を急須に入れるトコから自分でお茶を淹れてみた。 その方が茶葉の量とか調節できるし、手間をかけるとおいしくなるような気がするの。 『ありがと、いただきます。……あ、おいしい……!』 『良かったぁ! ウチね、最近緑茶が好きなの。おいしいから白雪ちゃんにも飲ませてあげたいって思ってたんだ。ふふふ、願いが叶っちゃった』 緑茶を飲んで2人して笑い合い、それで……さっそくウチは昨日のコトを謝ったんだ。 勝手に視守ってごめんなさい、どうしても2人が心配で……なんて、言いかけたウチを、白雪ちゃんは笑いながら止めた。 『あやまらないで。いいの、おどろいたけど嬉しかったわ。だってあのシャボン玉、マーちゃん1人で大変だったでしょう? とっても綺麗だった。私の好きな柑橘の香りもして、あのシャボン玉があったから肩の力が抜けたのよ。バラカスとちゃんと話せたのはマーちゃんのおかげだもん。ありがとう。私ね、今とっても幸せよ』 白雪ちゃん……ウチはもう泣きそうだった。 だってさ、こんなに幸せそうな白雪ちゃんを初めて視るから。 バラカスのコトが好きなんだなぁって、そう思うと、バラカスも良かったねって、100年越しの恋がやっと実ったんだって。 ああ……2人が幸せでウチも幸せだよ。 それで……と、そろそろ聞いてもいいかなぁ? 白雪ちゃんの髪の件。 『それはそうと……ねぇ、白雪ちゃん。髪、伸ばしたんだね。すごく似合ってるよ』 まずは軽く。 でないときっと照れちゃって、話してくれなくなっちゃうもん。 案の定、髪の話を出した途端、白雪ちゃんは真っ赤になってしまった。 『………………やっぱり……ヘン?』 大きな霊体(からだ)をシュンと丸めて、か細い声の白雪ちゃんは、なんだかとっても頼りなくって……ごめん、もう、その姿が愛しくてたまらない。 『ヘンじゃないよ、すっごーーーーーーーーーく可愛い! ねぇ、いつ伸ばしたの? 昨日の夜は短かったよね?』 『う、うん、あのね、朝一番でタッキー店長の美容院に行ってきたの。髪をちょっとだけ長くしてくださいって。で、でもね、仕上がったら思ったのより長くて、もう少し短くってお願いしたんだけど、『それは聞けないオーダーだわぁ』ってお店を出されちゃったの』★ ナイスタッキー店長! よく言ってくれました! 長い髪がこんなに似合うんだもん。 短くしたら勿体ないよ。 ★タッキー店長はコナモノ星のタコ族で、生者の頃は超有名な美容家でした。 死者になってからは黄泉の国の街の一つ、ミシレイニアスで美容院を開いています。 タッキー店長が登場したシーンがココです。 ↓ https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=628&preview=1
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