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「ねぇ、ユリちゃん。聞いてもいいかな?」
ユリちゃんは「ハイ! なんでしょう?」と姿勢を正して僕を見る。
「あのね、今更なんだけどね、あまりにナチュラルでスルーしちゃってたんだけど、お父さん……いや、お爺ちゃんの姿、視えてるよね?」
僕の質問にキョトンとした顔でしばしフリーズしたあと、
「爺ちゃんの姿? はい、見えますよ?」
あ、やっぱりそうだよねぇ。
あまりに普通に喋ってるから受け流すトコだったわ。
と、そこにお父さんが話に割り込んできた。
『当たり前だ、岡村バカヤロー。俺とユリの絆の深さなめんなよ? 俺が死んで、葬式も火葬も済んだあの日はな、あの世に向かって光る道を真っ直ぐ歩いてたんだ。なのによ、どこまで行ってもユリの泣き声が後ろから聞こえてきてよ、こりゃあ、もう放っておく訳にはいかねぇと思って、来た道走って戻ってきちまった。そん時からユリは俺が見える。この子は余所の子よりも純粋で感受性が豊かだからな、おそらくそれで見えるんだろうよ。すげぇだろ? この子は特別だ、なんたって俺の孫だからよ』
へっ! と鼻の下を指でこすって誇らしげに笑うお父さんの横でユリちゃんが続けた。
「そうなんですよ。あの日はびっくりしました。私が家で爺ちゃんの写真見ながら泣いてたら、死んだはずの本人が”泣くなユリ”って目の前に立ってるんだもの。私……最初訳がわからなくて、寂しくて爺ちゃんに会いたすぎて夢でも見てるのかなぁって思ったけど、考えてみれば昔からそうだったんです。私が泣いてると爺ちゃんは必ず駆けつけてくれたの。だけど爺ちゃん死んじゃって、さすがにもう来てくれないと思ってたから、すごく嬉しかったな、えへへ」
ユリちゃんの照れ笑いに、ほんわりしつつも思った。
という事は、お父さんが霊道を引き返し、現世のユリちゃんの目の前に現れた時、すでにお父さんの姿と声を認識できていたのか。
この子……もしかして……霊力持ちか?
「ユリちゃんは昔から幽霊が視えるの?」
「ぜんぜん! 婆ちゃんが死んだ時はまったく見えなかったし。今まで1度も幽霊を見た事もなければ金縛りにもあった事ないんですよ。幽霊を見たのは今回の爺ちゃんが初めてです」
「そうなんだ」
僕だってそうだった。
先代に出逢うまで、僕に霊能力があるなんて夢にも思わなかったんだ。
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