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『魔法の手かぁ、確かにそうだね。昔ね、ジャッキもお世話になったんだよ。白雪ちゃんは知らないでしょ。ジャッキね、黄泉に来た時すごい恰好してたんだから。ヨレヨレのシャツに古びたジャージ、白髪交じりの傷んだ長髪で、ずいぶんとワイルドだなぁって思ったもん。タッキーはさ、そんなジャッキをすっごく素敵にしてくれたんだ』
懐かしい。
____自分、そんなに変な恰好してる?
____少なくとも正装じゃあないなぁ、
そんな話をして、それで……ウチが連れてったんだ。
タッキーのお店に。
仕上がったジャッキを視た時、ウチはさ、まともに顔が視れなかった。
あまりにも素敵で、あまりにも逞しくて、あまりにもドキドキしちゃって。
『なぁに? マーちゃん、今1人で笑ってたわ。何か思いだしてたの?』
白雪ちゃんにそう言われ、慌てて顔を引き締めた。
恥ずかし……思い出して、うっかりニマニマしちゃったよ。
『ううん、チガウの、ごめん気にしないで、……それより! やっぱりタッキーはすごいよねぇ。魔法の手でこうパパーッとさ、あっという間に素敵にしちゃうんだから』
話を戻そうと、ウチは大袈裟に両手を上げた。
白雪ちゃんはそんなウチにちょっぴり笑ってこう言った。
『そうね。実を言うと私、鏡を視ながらドキドキしてたんだ。自分がどんどん変わっていくんだもの。不思議だった、ずっと視てた。本当の魔法みたいって思ったわ』
『あははは、わかる! 本当に本当に魔法だよね! あはは……はは……はぁ……そだね、うん、わかるよ、すごく、すんごくね____』
ああ、やだな。
いきなり来たよ。
コトバは鍵だ。
ふとしたきっかけで開かれる。
記憶が蘇る。
思い出そうとしてる訳じゃないのに、ウチの意思とは関係無しに、急に思い出すんだ。
それが辛かった事なら尚更、鮮明に____
____店長は魔法使い、
呪文は唱えないし、魔法の杖も使わないけど、それでもやっぱり魔法使いだ。
タッキーはコナモノ星のタコ族で、生者の頃は超有名な美容家さん。
本当にすごいんだ。
魔法の手はどんな霊でも素敵にしちゃう。
タコ族はもちろんだけど、ヒト族もウサギ族もカンガル族も、それ以外の霊達も、みんなに魔法をかけてきた。
魔法…………ウチも1度だけ、かけてもらった事があるんだ。
昔、死んですぐ後。
あの時、ウチは光る道を泣きながら歩いてた。
何度も頭を触りながら、触るたび叫ぶくらいに泣きながら。
今、ウチの髪は宇宙色だ。
黒髪にリアルの星が映り込んでる特別な髪。
前に、ジャッキに聞かれた事がある。
____どうして黒髪に星が輝いてるの?
って。
ウチは答えられなかった。
わざとふざけて、
____髪はね、ん………………ウチ、わかんなーい ★
こう答えるのが精一杯だった。
本当はね。
どうして星が輝いてるかというとね。
それは、タッキーが魔法をかけてくれたからなんだよ。
ウチの髪は元々ブロンド。
生者の頃も長い髪が大好きで、大事に大事に伸ばしてた……なのに。
ウチの命が終わる寸前。
現世で最後に見たものは、幼馴染の姿だった。
誰もいない崖の下。
倒れたウチは意識が朦朧としていた。
それでも覚えてるよ。
忘れられないよ。
彼女はひどく怒った顔で、一心不乱に、ウチの髪を切り刻んでいたんだから。
★ ジャッキーと髪のコトを話したシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=658&preview=1
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