第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

171/285

2365人が本棚に入れています
本棚に追加
/2550ページ
『マーちゃん……?』 テーブルを挟まない近い距離。 白雪ちゃんが心配そうにウチを視ている。 『ごめん、今ちょっとぼーっとしてた』 えへへと笑って答えてから、ごまかすようにお茶を飲んだ。 つられたのか白雪ちゃんもお茶を飲み、和菓子の一つを手に取ると小さな子供にそうするみたいに『あーん』と言ってウチの口に入れたんだ。 『(もぐもぐもぐ)……んふふ、ありがと。白雪ちゃんに食べさせてもらうと、いつもよりおいしく感じるなぁ』 『そう? それなら毎日食べさせてあげるわ』 『ほんと? 嬉しい! でも……あはは、そんなコトしたらバラカスがヤキモチ焼いちゃうよ』 …… ………… どっすーん! ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!(俺にも『あーん』しろー!) …… ………… 『『…………んぷ!』』 またまた浮かんだ転がるバラカス、ウチらは顔を視合わせ笑ってしまった。 勝手な想像じゃないよ。 だってバラカス、絶対ヤチモチ焼くもん、絶対 ”俺にも” って言うもん。 ひとしきり笑った後。 少しの間があって、白雪ちゃんは急に真面目な顔になったんだ。 そして、ウチの髪を優しく撫ぜて、ウチの顔をまじまじ視て、ちょっぴり悲しそうにこう言ったの。 『……ねぇ、マーちゃん。もしかして……思い出しちゃったのかな、』 あ……ウチ、なんにも言ってないのに、ほんの少し黙っただけなのに。 白雪ちゃんには分かってしまうんだ。 『んと…………えっと……うん、ごめん、少しだけ。でもね、大丈夫だよ』 もう一回えへへと笑う。 心配かけたくないよ、それに本当にもう大丈夫なの……と、思ったのに、次の瞬間、ウチは白雪ちゃんに抱きしめられていた。 『ごめんね、私が髪の話をしたからね』 『ち、ちがうよ! 白雪ちゃんはなんにも悪くない! 髪の話とか、それも関係ないよ! やだ、ごめん、ちがうの、本当に! ウチ、ここんとこずっと思い出さなかったんだ、今日はたまたま、なんでだろ、どうしてだろ、んと、んと、……あぁ……分かった、たぶんね、本当に大丈夫になったからだと思う』 そんな顔しないで____ 言いながら和菓子を一つ、手にとり『あーん』と口に近付けると、白雪ちゃんは素直にぱくっと食べてくれた。 ウチは鋼の腕の中で、モグモグしてる大親友を視上げていた。 白雪ちゃんは優しいなぁ……好き、大好き。 あの日、光る道でもこうしてくれたっけ。 泣いてるウチを視つけだし、ぎゅうって、抱きしめてくれたんだよね。 …… ………… ………………
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2365人が本棚に入れています
本棚に追加