2365人が本棚に入れています
本棚に追加
/2550ページ
『マーちゃん……?』
テーブルを挟まない近い距離。
白雪ちゃんが心配そうにウチを視ている。
『ごめん、今ちょっとぼーっとしてた』
えへへと笑って答えてから、ごまかすようにお茶を飲んだ。
つられたのか白雪ちゃんもお茶を飲み、和菓子の一つを手に取ると小さな子供にそうするみたいに『あーん』と言ってウチの口に入れたんだ。
『(もぐもぐもぐ)……んふふ、ありがと。白雪ちゃんに食べさせてもらうと、いつもよりおいしく感じるなぁ』
『そう? それなら毎日食べさせてあげるわ』
『ほんと? 嬉しい! でも……あはは、そんなコトしたらバラカスがヤキモチ焼いちゃうよ』
……
…………
どっすーん!
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!(俺にも『あーん』しろー!)
……
…………
『『…………んぷ!』』
またまた浮かんだ転がるバラカス、ウチらは顔を視合わせ笑ってしまった。
勝手な想像じゃないよ。
だってバラカス、絶対ヤチモチ焼くもん、絶対 ”俺にも” って言うもん。
ひとしきり笑った後。
少しの間があって、白雪ちゃんは急に真面目な顔になったんだ。
そして、ウチの髪を優しく撫ぜて、ウチの顔をまじまじ視て、ちょっぴり悲しそうにこう言ったの。
『……ねぇ、マーちゃん。もしかして……思い出しちゃったのかな、』
あ……ウチ、なんにも言ってないのに、ほんの少し黙っただけなのに。
白雪ちゃんには分かってしまうんだ。
『んと…………えっと……うん、ごめん、少しだけ。でもね、大丈夫だよ』
もう一回えへへと笑う。
心配かけたくないよ、それに本当にもう大丈夫なの……と、思ったのに、次の瞬間、ウチは白雪ちゃんに抱きしめられていた。
『ごめんね、私が髪の話をしたからね』
『ち、ちがうよ! 白雪ちゃんはなんにも悪くない! 髪の話とか、それも関係ないよ! やだ、ごめん、ちがうの、本当に! ウチ、ここんとこずっと思い出さなかったんだ、今日はたまたま、なんでだろ、どうしてだろ、んと、んと、……あぁ……分かった、たぶんね、本当に大丈夫になったからだと思う』
そんな顔しないで____
言いながら和菓子を一つ、手にとり『あーん』と口に近付けると、白雪ちゃんは素直にぱくっと食べてくれた。
ウチは鋼の腕の中で、モグモグしてる大親友を視上げていた。
白雪ちゃんは優しいなぁ……好き、大好き。
あの日、光る道でもこうしてくれたっけ。
泣いてるウチを視つけだし、ぎゅうって、抱きしめてくれたんだよね。
……
…………
………………
最初のコメントを投稿しよう!