第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ウチの死因は事故死。 高校3年生の時、あと少しで18才の誕生日……という夏の日に死んだんだ。 生者としての最後の日。 ウチは学校帰りの田舎道を、幼馴染のジーナと一緒に歩いていた。 舗装すらされていない土の道。 右側には大きな畑が、左側には深い林が広がって、その日はとても気温が高くって、うだるように暑かったのを覚えている。 …… ………… ……………… 「はぁぁ……毎日暑くてうんざり」 ジーナはそう呟くとハンカチで顔と首の汗を拭い不機嫌そうな顔をした。 棘のある言い方と重たい空気に心臓が縮みそうだ。 返事、した方がいいかな……? でもな、今のはウチに言ったんじゃないんだろうな、答えても無視されるんだろうな、だけど____ 「ホントだよねぇ。こんなに暑いとアイスが食べたくなっちゃうよ」 嫌な汗が出る。 無理に明るく答えてみたけど、やっぱりジーナは返事をしない。 横を向けば目が合うけど、鬱陶しそうに逸らされた。 ここんとこ、ジーナはいつも機嫌が悪い。 学校へは行きも帰りも一緒だけれど、あんまり話してくれなくなった。 話しかけても返事をしないか、したとしても ”うん” とか ”ああ” とかそれだけだ。 ウチ……何か気に障る事をしたのかな……?  分からない……だって、ジーナがこうなる前の日は笑って話をしてたんだ。 おかしなトコはなにも無い「また明日」そう言って手を振り合った。 なのに……なんで? 数えれば、もう一か月もこんな調子だ。 2人で無言の通学時間、これじゃあ1人でいるのと変わらない。 学校でも話さないし、いつまでこうしているんだろう? やだな、辛いよ。 ウチはジーナが大好きなのに。 子供の頃からずっと一緒のお隣さん、幼馴染は姉妹のように育ったの。 元に戻りたいよ、それが駄目ならせめて理由が知りたいよ。 うん……今日はちゃんと話をしよう。 怖いけど、答えてくれないかもだけど、でも、それでも。 「ジーナ、ちょっといいかな?」 背中に汗が流れだす、暑いだけの理由じゃない。 ウチ……ジーナに緊張してるんだ。 ずっと仲良しだったのに、なんでも話し合えたのに。 黙ったまんまでウチを見る、その無表情がすごく怖い。 「ねぇ、ジーナどうしたの? なんでずっと無視するの? ウチ、なにか悪い事した? したなら教えて、ちゃんと謝りたいよ。ジーナに嫌われたくないよ、」 こんな事を10回は言った。 ジーナは答えてくれなくて、黙ってウチを見てるだけ。 それはとっても冷たい顔で、途中、何度か舌打ちをされた。 ねぇ……そんなに? そんなにウチが嫌いなの? どうして? 教えて? でも、でもさ、学校だけは一緒に行ってくれるんだ。 ウチの全部が嫌いになったんじゃないって……そう、信じたい。 それだけを心の支えに、何度も何度もお願いした。 話してよ、何考えてるか教えてよ。
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