第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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どのくらい時間が経ったのか。 ジーナはウチを睨んでいるし、ウチは涙が止まらないし……そんな時だった。 遠くから、人の声が聞こえてきたの。 近所の人か学生か、分からないけどジーナは大きく舌を鳴らすと、ウチの手を痛いくらいに引っ張った。 「マジョリカ! こっちに来て!」 どうしたの、そう聞く事も許されず、道からそれて林の中に入っていった。 夏の暑さは木も草も、うんと大きく育てるから、木々の間に紛れてしまえば道からウチらは見えなくなるの。 何度も後ろを振り返る、道がどんどん遠くなる、林の中は薄暗くって心細くなってくる。 「ジーナ! どこまで行くの? 手が痛いよ、離して、」 後ろ姿の幼馴染は今度は無視をしなかった。 そのかわり、 「ウルサイ! 黙ってて!」 大きな声で怒鳴られた。 ウチは怖くてたまらなかった。 だっていつも言われてる、パパにもママにも、 ____マジョリカ、林の中は昼間でも入っちゃ駄目よ、 ____この時期は木も草も育ちすぎるの、 ____一歩入れば紛れてしまう、 ____誰かが道を歩いていても、 ____林にいたら気付かれない、 ____何があっても気付かれない、 ____だから絶対、入っちゃ駄目、 「ジーナ……戻ろうよ……」 ウチはおずおずと声をかけた。 黙っててって言われたけど、早く(ここ)から出たいと思った。 怖いよ、悪い人がいるかもしれない。 それに昨日は雨が降ったもの。 地面はとってもドロドロしてて歩くのが大変だ。 この先行っても崖しかないし、危ないよ、帰ろうよ。 ジーナ、お願いだからウチを見て、お願いだから一緒に戻ろう、お願い、お願い、 「ジーナ、ねぇ、」 勇気を出して、もう一度声をかけた。
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