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「ウルサイッ!!」
ザザァッ!!!!
鳥が一斉に飛び立った。
それほどの大声だった。
怒鳴ったジーナは振り返り、歯を食いしばってウチを見る。
顔に汗を滲ませて、目を真っ赤に血走らせ、浅い呼吸を繰り返し、ジィッとウチを見続けたんだ。
ウチは震えが止まらなかった。
何かを言うのも怖くなり、もう何も言えなくなった。
重い沈黙と流れる汗。
暑さに苛ついているのか、それともウチに対する苛立ちなのか。
遠慮のない舌打ちをしたジーナは再び歩き出したんだ。
ウチの手首を強く引っ張り林の奥へとどんどん進む。
____ねぇ、どこまで行くの?
聞きたいのは山々だけど、とてもじゃないけど怖くて聞けない。
かと言って逃げ出す事も震えて出来ない。
ウチはただただジーナに従った。
泥の地面に足を取られて歩くだけでも大変だけど、これ以上ジーナを怒らせるよりはマシに思えたからだ。
……
…………
………………
それからしばらく黙って歩いた。
振り向けば道はうんと遠くに見えて、誰の声も聞こえてこない。
林の中はウチとジーナの2人きり。
もし、ここで何かが起こっても、誰にも見られないんだ、誰にも知られる事もないんだ…………
え……待って……ウチ……なんでこんな事を考えたたんだろう…?
なにも起こるはずがないじゃない。
今のジーナは怖いけど、不機嫌の延長だ。
きっとウチが何かをしたの、それをこれから教えてもらって謝るんだ。
それで、仲直りして、それで……2人で一緒に帰るの。
いくらそう思っても強い不安が消えてくれない。
ウチはそれを心の中で一生懸命否定した、なんとか不安を消そうとした。
大丈夫、悪い事は起きないはずだ。
大丈夫、だいじょうぶ、ダイジョウブ、そう何度も言い聞かせているのに、ウチの心の奥底はジーナから逃げたくてたまらなかった。
どうしてこんな事を思うんだろう、親友なのに、幼馴染なのに____
そんな不安がピークに達した時、
ジーナはウチの手首を解放すると、急に足を止めたんだ。
そして、なんの前触れもなくこう言った。
「…………マジョリカなんて大嫌い……!」
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