第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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聞いた瞬間、頭が真っ白になった。 ”大嫌い” 、ジーナは確かにそう言った。 あからさまなウチへの敵意に身体の震えが止まらない。 それでも、なんとか勇気を出したんだ。 声はかすれてしまったけれど、 「……待って、お願いだから理由を聞かせて、ウチが何かしたのなら教えてほしい、ジーナにちゃんと謝りたいよ、」 縋る思いでこう聞いた。 するとジーナは冷たい目をして言ったんだ。 「理由が知りたい? なんの? マジョリカを無視した理由? それなら今言ったじゃない。アンタの事が大嫌いだからだよ」 「…………! な、なんで? なんで急に嫌いになったの? ウチらずっと仲良かったじゃない、小さい頃から姉妹みたいに育ったよ。 ねぇ教えて、先月までは普通だった。学校終わって一緒に帰って「また明日」って笑ってバイバイしてさ。……その次の日からだよね、急に態度が変わったのは」 ずっと気になっていた。 一晩でいきなり変わってしまったジーナ。 ”なにがあったの?” 、あの時、ウチは何度も聞いた。 でも答えてはくれなかった。 鬱陶しそうに目を逸らし、だんまりをきめていたんだ。 「別に……あの日を境に嫌いになったんじゃない。もっと前から嫌いだったよ」 え……? 自分の耳を疑った。 ジーナが言い間違えたんだと思いたかった。 でも、そうじゃなかったんだ。 「待って…………もっと前から……? それって……いつからなの……?」 声まで震える。 ジーナはそんなウチを見ておかしそうに笑った。 「知りたい? いいよ、教えてあげる。もっともっと前からだよ。私ね、小さい頃からマジョリカが大嫌いだったんだ」 「小さいって……うそ……でしょう?」 「嘘じゃないよ。アンタは気付いてた? 私達がいつも比べられてたのを。幼いながらにそれが嫌でたまらなかったよ。だってみんなが陰で言うんだ。”マジョリカは可愛いのに”、”マジョリカは勉強も運動も出来るのに”、”マジョリカは性格もいいのに”って。それで最後は決まって”それに比べてジーナは……” で締めくくられる。幼馴染で常に一緒だから言われるの。こういうのが今でもあるんだから本当にたまらないよ」 ジーナの目から涙が流れる。 悔しそうに歯を食い縛り、目をゴシゴシこすった後、こうも続けた。 「悔しかったし悲しかった。でもね、人って慣れるイキモノなんだ。チラホラ聞こえるそういうの、うまく流してきたんだよ。アンタの事は嫌いだけど、……まあ、優しいトコもあるし、高校さえ卒業すればなんとかなる、遠くの大学に行けばいいって、そう思って耐えてきた。本当はさ、友達やめて離れたかったけど、家は隣で親同士が仲が良いからそうもいかない」 「なんで……? 本当に嫌だったら離れたって良かったのに。ジーナの気持ちの方が大事だもの」 「アンタって本当に分かってない。そんな事したら周りがウルサイよ。だってマジョリカ泣くでしょう? さっきみたいに「ウチちゃんと謝りたいよ」なんてさ。そんな事してごらん? あっという間に囲まれて、「マジョリカを許してあげて」だの「早く仲直りしなさい」だの、アンタの味方に私が責められるんだ。アンタはみんなに愛されてる、ただそこにいるだけで好かれるからね。そこまでくると脅威だよ」
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