第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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脅威……その言葉が頭の中でグルグルまわる。 そんな風に思われてたなんて……ううん、そんな風に思わせてしまったんだ。 ジーナはとっても優しい子、こんな事を言わせてしまったのは、ぜんぶウチのせいだ。 ウチは……ウチはどうしたら良いんだろう……、 ジーナは泣いていた。 泣きながらウチにたくさんの事を言ったんだ。 ____ねぇ、私の気持ちが分かる? みんながマジョリカを褒めるんだ、 綺麗な子、可愛い子、優しい子って、 アンタは誰からも愛される、 隣の私はいつだってオマケでさ、 引き立て役にもならないくらい、 それでもね、みんなの前では必死になってアンタを褒めた、 どうしてかって? そうしないと ”ジーナはマジョリカを妬んでる” って言われるからだよ、 そんなの悔しい、 話のネタになりたくない、 だから平気な顔をしてたんだ、 でもそうだ、本当はみんなの言う通り、 確かに私は嫉妬をしてる、 だけどさ、仕方がないと思わない? だって……だって、 こういうのが10年以上も続いてるんだ、 頼んでないのにみんなが比べる、 私とアンタを比べて笑う、 そんな事、気にする私がいけないの? 傷付く私は性格が悪いのかな? ああもういいや、きっと性格悪いんだ、 もう嫌だ、もう限界、 せめて……せめてアンタが嫌なヤツなら良かったよ、 それならきっと救われたのに、 アンタはいつだって優しいから……だから嫌い、 マジョリカなんて大嫌いっ! そこからの記憶は、とても曖昧で切れ切れだ。 一部に靄がかかり、一部は鮮明に覚えてる。 ジーナは大泣きしながらウチに掴みかかってきた。 髪を引っ張られ、肩をドンドン叩かれて……でもね、違うの。 ジーナは本気でウチをどうこうしようだなんて思ってなかった。 あれは不幸な事故だったんだ。 2人は足場の悪い中、激しくもみ合っていた。 木にぶつかったりよろけたり。 そうこうしながら徐々に動いて気付かないまま林の終わり……そう、崖っぷちまで来ていたの。 夏の暑さは草木を大きく育ててしまう。 もうもうと生える草葉は地面を覆い、一体そこがどうなっているのか、パッと見だけじゃ分からない。 それは突然だった。 今まで感じていたはずの地面の感触が消えたんだ。 あ、と思う間もないくらい、途端身体が落ちていく。 すべてがスローモーションだった。 悲鳴を上げて、目を見開いて。 ジーナと目が合い、助けてほしくて手を伸ばず。 ジーナもウチに手を伸ばす、……だけど、あと数センチが届かなかった。
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